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「スマパチ」は新ステージへ |POKKA吉田氏が3つの緩和を徹底解説 アミューズメントジャパン2024年7月23日

日本遊技機工業組合(日工組)が、スマパチに限定してラッキートリガーと総量計算、Cタイムに関する内規の細則を変更し、新ルールに対応した機種のホールへの設置が7月1日以降可能となった。では、これら3つの新ルールが市場にどんなインパクトを与えるのか。業界メディアのシークエンス発行人・編集長で業界事情に詳しいPOKKA吉田氏に、変更された内規の細則の解説と今後の展望を聞いた。

──はじめにスマート遊技機の状況を振り返ってください。

パチスロについては、2022年11月21日にスマスロが登場する前に、6.5号機が市場で急に脚光を浴びる状況になっていました。22年7月4日に『犬夜叉』と『カバネリ』、『アクエリオン』の3機種が導入されて、初日からすごいデータをたたき出し、急にムードが変わったんです。その後、同月19日の「スマート遊技機フォーラム」で日工組と日電協がホール関係者に向けて情報を発信。このフォーラムを受けて、スマスロに対するホールの期待感が驚くほど上がりました。

実はフォーラムが開催される前に、スマスロでは有利区間のゲーム数の上限規制が撤廃されるなどの優位性は公表済みで、スマパチより導入が早いということ以外、フォーラムで目新しい情報はなかった。にもかかわらす、6.5号機が脚光を浴びているまさにその瞬間だったので、ホールがスマスロを買わなくてはというマインドになっていきました。そして11月に導入されたスマスロは、早々に『ヴァルヴレイヴ』が結果を出し、去年の『スマスロ北斗の拳』や『戦国乙女』、『からくりサーカス』、『モンキーターン』と成功機種を数多く輩出。いまではスマスロは完全に市場が確立されています。

──一方でスマパチはなかなか浸透していません。

最初にスマパチが登場したのが昨年の4月。当初の2機種が結果を出せず、注目されていた『仕置人』も期待外れで苦しいスタートとなってしまい、まともな評価を得るのがだいぶ遅れてしまった。その後、7月に『花の慶次』、9月に『SAO』が出て、ようやくスマパチでも稼働する機械が出てきて、11月の『Reゼロ2』でやっとスマパチでもこれだけすごいのができるんだという認識になった。ところが今年に入ってまだ『Reゼロ2』を超えるスマパチが出てきていません。スマパチはいま、『Reゼロ2』とその他という状況になっているのが残念なところです。

スマパチ開発意欲に温度差
LTの高評価が転換点に

──これまでスマパチが浸透してこなかった理由をどう見ていますか?

最大の要因は、パチンコメーカー各社のスマパチに対する開発意欲の熱量に、非常にばらつきがあったこと。スマスロはAT機を作るほとんどのメーカーが、スマスロで作らないとホールに買ってもらえないというぐらいの危機感を持って開発していますが、パチンコメーカーはP機のほうがいい、スマパチを乗せなくてもという熱量のメーカーがまだまだあるのが、こうした現状を招いた結果なのかなとは思っています。

──現状はパチスロの業績が良く、パチンコは全体として業績が低迷しています。

パチスロが6号機になって以降はパチンコがホールの主力で、数年間はほとんどのホールが完全にパチンコで収益を上げていて、パチスロはゆるく使う店が多かった。21年12月の『エヴァ15』と22年1月の『Reゼロ鬼がかり』からはこの2機種が市場をけん引。その後、先ほど言ったように22年7月に出た6.5号機から急にパチスロ市場が活性化して、8月には『鬼武者』も出た。そして11月にスマスロが出て、23年4月の『スマスロ北斗』で完全にパチスロはスマスロの方がいいねとなった。一方でP機は、『Reゼロ鬼がかり』以降に大成功機種がなく、パチンコは落ちていく一方でした。

>──今年の3月からラッキートリガー(LT)搭載機が登場しました。

面白い現象が2つあります。ひとつは3月から始まったLTで、完全にLT機優位になったこと。これは運も良くて、LTの内規は昨年6月ごろに流布されたんですが、この内容を見て業界では誰も期待をしていなかった。なんでこのタイミングでこの内規変更なんだというムードでした。なので3月から販売されたLT機はあまり台数が出ていません。ところがLT搭載の『北斗の拳 強敵』と『緋弾のアリア~緋緋神降臨』がすごく良かったので、台数が少ないこともありLT機がじわじわという話になってきた。その後、今や『まどマギ』に代表されるように、完全にP機のLT機がパチンコ市場をけん引している。LTのおかげでパチンコ市場が復活傾向に入ってきました。

──もうひとつの「面白い現象」は?

ここ数年、見たことがなかったのですが、昨年5月から導入された『北斗暴凶星』が、気が付いたらすごくいい機械になっている。導入直後はあまり評価されていなかったんですよね。こんなことが319の機械であるんだという話で。『Reゼロ2』とその他で進んでいたスマパチ市場、あるいは『Reゼロ2』と『エヴァ15』と『Reゼロ鬼がかり』だけになったパチンコ市場で、当たるまではみんなスマホを見ているといった遊び方に対するアンチテーゼとして、『北斗暴凶星』があったり、LTが人気になったりしているのかなという気がしています。


新LTと新総量計算で
設計自由度が高くなった

──そんななか、日工組がスマパチ限定で内規の細則を変更した新ルール対応の機種が7月から登場しはじめています。その内容を詳しく教えてください。

すでにご存じの方も多いと思いますが、内規の細則変更は3つあります。一つ目はLTが変わりました。業界ではLTの突入率が緩和されたと理解されている人が多いようですが、それは正確ではありません。実はLTの内規の計算書を見たことがあるんですが、難解で何が書いてあるのかさっぱりわからない(笑)。言えることは、突入率を緩和したわけではないということ。新LTのルールは出玉全体に対してLTによってつくりだす出玉の割合が多く持てるようになったこと。それによって、LT突入の確率を引き上げる設計もできるようになったので、そういう風に見える緩和にはなっていますということです。LTの設計自由度が高くなったことを意味するので、例えばメーカーによっては尖った設計にして、出玉性能に完全に寄せた設計も可能だし、そうじゃない設計も可能なので、純粋に開発自由度が高くなったという印象です。

──新LTの第一弾として、『花の慶次 傾奇一転』が導入されています。

すでに打っている人はわかると思うんですが、いきなりの当たりでLTに入る割合が高く設計されているので、従来のP機のLT機と比べると、LTに突入するハードルが低いかなという作りになっている。LTにもたせられる出玉の割合が増えたため、LTの設計の自由度を高めることができるようになったことは事実なので、今後スマパチのLT機はみんながLTを広く楽しめるようになると思います。現時点でリリースがアナウンスされている機種で見ると、『ゴッドイーター』のようにLTに寄せまくっている機械では突入率が高いとは言いづらい。この辺は各メーカーの考え方次第ですよね。まずは、『花の慶次 傾奇一転』でLTの緩和でどこまでになったのか、実際に打つなり、データを見て体感してみてほしいです。

──2番目が「一連の大当り搭載機」の新総量計算ですね。

これも総量規制が緩和されたと思っている業界関係者が多いのですが、総量規制の上限数値はまったく変わっていないので、総量規制の緩和というわけではありません。「一連の大当り搭載機」とは『Pとある科学の超電磁砲』のような普図で大当たりを抽選するタイプです。このタイプは、スマパチ限定で一連の大当りと見なす出玉が増えたので、見かけ上、総量が増えたという印象を持つ設計が部分的に可能になったということが言えると思います。これ自体は設計の自由度が増すことと出玉性能の強化ということになるので、スマパチはP機と違って349にできる上に、そういう設計ができるということなので、より出玉性能強化に振る設計も可能になったということです。

──新総量計算に対応した機種として『仮面ライダー電王』がメーカーからアナウンスされています。

『電王』は新総量計算に加えてLTも新しい基準なので、一番良い状態で2700個の77%継続というスペック。これはすごいですよね。P機でできるはずがない設計値になるので、単純にすごいなという感じです(笑)。この設計が好きなお客さんは絶対にいると思います。

新・Cタイムで可能になった
パチスロ的なゲーム性

──3つ目のCタイムはどうですか?

基本的にはCタイムへの特賞率の上限が最大50%まで引き上がったということ。この対象機種でメーカーからアナウンスされているのが、いまのところ『キョンシー』だけ。このゲーム性を見ると、Cタイムの使い方がいままでよりだいぶ変わっていて面白いですね。感覚的にはパチスロっぽい出玉設計です。Cタイムが発動する条件がすごく多様になっている。ラッシュ終了時とラムクリア時のほかに、いきなりCタイムに突入したり、これは小当たりだと思いますがCタイム中の通常大当たりでも発生したりする。『キョンシー』の設計で面白いのは、転落抽選によるCタイムなので、Cタイムの「月夜モード」が発動したら、「月夜モード」が終わるまでは当選確率が高くなっている。『キョンシー』の場合40%の期待値ということになっていますが、通常時にいきなり入ったりする。本当に大当たりが期待できるモードに作ってあるところにパチスロっぽさを感じます。こういう設計もやっていいですよということになったことが大きいですよね。

──高確に行って、また低確に戻ってみたいな感じですね。

パチスロではATの抽選方式を自由に作れる。それがパチンコでできるならこれはひとつの武器になるでしょう。Cタイムを搭載するしないは設計上メーカーが考えることですが、こういうことがパチンコでできるようになるのはすごいなと。だからニューギンさんは「新領域のCタイム」と謳っているのでしょう。2年前の「スマート遊技機フォーラム」で日工組の榎本理事長が「パチスロのゲーム性にパチンコも近づいていく」というような発言をされていました。まさにそれを実現した一端が今回のCタイムの緩和なのかなと思います。

──新ルール対応機種ではありませんが、8月にスマパチで『北斗の拳10』の導入が始まります。この機種をどう見ていますか?

多くのホール関係者が『北斗10』には期待していますよね。『北斗10』は3つの新ルールのどれにも対応していなくて、これまでのルールでも作れたスマパチなんですが、これが一番注目されているのが面白い現象。しかもサミーさんは「シリーズ最高傑作」と言っている。それが本当だったらものすごいじゃないですか。『北斗10』ではバランスをとっているんですね。下位ラッシュが80%継続で、LTに入ると89%継続。仮に新LTを使って上位ラッシュの割合を上げようとすると下位ラッシュを下げなくてはならない。下位ラッシュでも十分に楽しんでもらえて、さらに良いものがもらえるというバランスで、こっちが面白いと考えたのだと思う。これはこれで十分ある話ですよね。

メーカーの姿勢に変化も
スマパチは伸びしろばかり

──新ルールによって、本当にいろんなゲーム性の機械が出てきそうですね。

今年に入ってから3月のLTもあり、7月にスマパチに限った緩和がなされ、かなり多くのメーカーがスマパチに向き合うようになってきたので、これでパチスロメーカーの熱量と同じぐらいになると思う。いまパチンコメーカーのスマパチへの開発意欲は去年よりはるか上がっています。3月からのLTが業界の下馬評をはるかに超えてものすごくファンやホールにウケているのを見て、そのLT性能が緩和されるのがスマパチだけとなったら、ほとんどのメーカーはそこにベットしますよね。いままでできていることはできて、できなかったことができるんだから、悪くなるはずがない。普通の感覚でいうと、パチンコメーカーの開発担当者はいろいろできるから楽しくて仕方がないんじゃないでしょうか(笑)。

──最後にまとめをお願いします。

パチンコに元気がない状況が続いていて、それでも今年の3月からLT機が登場したことで、急に市場が元気になってきて、いまや新しいパチンコはみんなLT機かというラインナップになってきている。こういう状態になっている中、7月以降導入のスマパチについては、LT性能が緩和されて、新しい総量計算の方式になって、Cタイムも緩和されてということになるので、ほとんどのパチンコメーカーは開発資源をスマパチに寄せるのは事業として当たり前の話になる。なので、これからスマパチはたくさんいろんな設計の機械が出てくることになるでしょう。しかも日工組の榎本理事長が5月29日の日工組の総会後の懇親会で「いまゲーム性の幅を広げるお願いを行政にしていて、近いうちに実現できることを期待している」ということをおっしゃっていましたが、あれは今回の3つの緩和ではなく別の緩和の話なので、スマパチは伸びしろばかり。ちょうど2年前の7月19日のスマート遊技機フォーラムのタイミングで、6.5号機がこれほどよくて、さらにスマスロがでてくるということで、全国のホール関係者がものすごく期待を高めていったのと同じように、これからホール関係者がスマパチに期待していくようになるんじゃないでしょうか。ようやくスマパチは新しいステージになって、市場が確立される時期に入ったかなと思っています。日工組はスマパチの規制緩和にはこれからも積極的に取り組む方針だと聞いていますので、榎本理事長がおっしゃったゲーム性の緩和が実現した後も、まだまだ期待できると思います。

聞き手=野崎太祐(アミューズメントジャパン)

▼7月以降導入のスマパチラインナップ

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