~ マルハン北日本カンパニーが挑む「地域共創」の全貌 ~

マルハン北日本カンパニーは4月3日、岩手・公楽グループのパチンコ事業(WINS10店舗)を承継した。今回のM&Aは単なる店舗網の拡大を目的としたものではない。そこには、パチンコという娯楽の本質的な価値を「ジャパニーズ娯楽」として再定義し、地域社会と深く結びつく「地域共創」という新たな戦略が込められている。ファン人口の縮小という課題に直面する業界において、同社が目指すリーディングカンパニーとしての姿を追った。

目次

【パート1:INTERVIEW】

「 公楽(WINS)10店舗の事業承継は理念の合致 」

三原 太郎
マルハン北日本カンパニー上席執行役員 開発戦略部 部長

マルハン北日本カンパニーで店舗開発・建築を担う三原太郎氏は、今回の公楽の事業承継を「理念の合致」と強調する。その中心に据えているのが、同カンパニーにおけるパチンコ事業のコンセプト「ジャパニーズ娯楽」であり、それに基づく「地域共創」という考え方だ。

岩手での60年超の業歴
地域への想いを承継する

──今回の事業承継を決定した、最大の決め手はどこにあったのでしょうか。

背景にある最も重要なキーワードが、私たち北日本カンパニーが昨年7月7日に新たに策定した「カンパニーイズム」におけるパチンコ事業のコンセプト「ジャパニーズ娯楽」です。今のパチンコ業界は非常に厳しい局面にあります。こうした状況下で、私たちは数年前から「自分たちはこの業界をどう捉え、どのような社会的価値を提供すべきなのか」を改めて問い直してきました。その答えとして導き出したのが、パチンコを日本独自の文化として再定義する「ジャパニーズ娯楽」というコンセプトです。

今回の承継においても、この価値観を共有できるかどうかが極めて重要でした。公楽様は、岩手で60年以上にわたって地域に深く根差し、時には倒産危機にあった地元の酒蔵を救済するなど、地域貢献を体現してきた企業です。公楽様が築き上げてきた地域への想いは、私たちが目指す「地域共創」の理念と見事に合致していました。単なるM&Aではなく、想いを「承継」することこそが最大の目的でした。

マルハン北日本カンパニー
2021年以降にオープンした店舗

日本独自の発展を遂げた
パチンコを改めて再定義

──再定義した「ジャパニーズ娯楽」というコンセプトを推進するには、公楽のような「地域共創」に対する理念が根付いている企業文化が不可欠だということですか。

「ジャパニーズ娯楽」は、単にパチンコを言い換えた言葉ではありません。まず前提条件として、日本の治安の良さと、それを守る社会基盤があります。不特定多数の方々が平和に楽しむことができる環境そのものが、世界的に見て極めて異例だということです。これは、日本人の誠実さや、高い遵法精神があって初めて成り立つものです。

第二に、行政と民間企業が築き上げてきた「緻密な法規制と創意工夫のバランス」が挙げられます。パチンコは厳しい遊技機規則や風営法という枠組みの中にありながら、驚異的なコンテンツ制作と技術革新を続けてきました。厳格なルールの中で最大限の楽しみを追求する姿勢は、日本のものづくり精神の象徴でもあり、日本でしか生まれ得なかった娯楽の形です。

──娯楽文化としての側面については、どのようにお考えでしょうか。

現代のパチンコは、日本を代表するアニメ作品や、最先端のCG技術、没入感を高める音響システムなどが集結した、複合メディアとしての側面を強めています。私たちは、パチンコホールを日本独自のコンテンツ消費文化として位置づけ、世界に誇るべき独自のプレゼンスとして確立しています。

そして重要なのが、「余暇文化」としての役割です。週末や仕事帰りに、誰に気兼ねすることなく一人でも気軽に楽しめるパチンコは、日本人のライフスタイルに深く根ざしてきました。日本でしか成立しない、独自の娯楽であるパチンコを、余暇の選択肢が多様化するなかで、社会的な地位や立ち位置を再定義すべき時期にきていると我々は考えています。つまり、特別なことではなく、日常の延長線上にある心の拠り所としての価値を認めることが、産業を次世代へと繋ぐ鍵になるのではないでしょうか。このように、日本の治安、技術力、法秩序、そして国民性がパズルのピースのように組み合わさって完成した日本にしかない、日本独自の娯楽文化であるパチンコ。それこそが「ジャパニーズ娯楽」なのです。

地域共創とは能動的なもの
街に不可欠な存在へ

──その「ジャパニーズ娯楽」を支える基盤として、以前から掲げられている「地域共創」があるのですね。従来のCSRとは何が違うのでしょうか。

今までは、企業としての責任を果たすために、寄付や清掃活動など、すでに顕在化している課題に対して受動的に応えるというニュアンスが強かったように思います。

それに対して私たちが現在推進している「地域共創」は、もっと能動的で、地域の方々と手を取り合いながら、まだ見ぬ地域の可能性を共に作り上げていくプロセスそのものを指しています。具体的なアクションとしては、各店舗の店長やスタッフが自ら商工会議所や青年会議所、あるいは自治会などのコミュニティに入って、「この地域を良くするために、私たちに何ができるでしょうか」と対話を重ねることから始めています。

例えば、お祭りに対して単に協賛金を出すだけで終わらせるのではなく、運営そのものにパートナーとして参画し、一緒に汗を流して街を盛り上げていきます。こうした活動を通じ、パチンコをされる方はもちろん、されない層も含めた地域社会にとってマルハンが「なくてはならない存在」になることを目指しています。

店長の資質・役割が変容
地域活性化のハブに

──そうした活動を現場で推進する上では、店長に求められる資質や役割が変化してくるのではないでしょうか。

はい。おっしゃる通り、店長に求められる資質や役割は大きく変化しています。かつての店長は、機械選定から広告宣伝の打ち出し方まで、自店の営業数値を上げることに全精力を傾けており、大きな裁量を持っていました。しかし現在の市場環境などを鑑みて、店長に求める役割も見直し、地域社会やスタッフと真摯に向き合う時間を多くし、より深く地域に根付く店舗づくりに注力してもらっています。

今の店長に求められているのは、店舗という空間の「状態」を適切に管理しつつも、地域との深いつながりを創出する「コミュニティリーダー」としての役割です。地域からどれだけ必要とされているか、スタッフと強固な信頼関係を築けているか、という点は、現場を見れば自ずと伝わってきます。

──規模ではなく「質」で業界を牽引する考えについて改めて聞かせください。

マルハングループ全体の売上高で見れば業界のトップ企業ですが、北日本カンパニー単体で見た場合は、人口の多い地域を抱える他カンパニーに売上規模で勝ることは現実的ではありません。だからこそ、企業として「質」で業界をリードすることを目指しています。

まずは、「パチンコは素晴らしい日本の文化である」という誇りを全従業員が持ち、それを自らの言葉と行動で世の中に発信し続けることで、業界全体のイメージを根本から変えていきたいと考えています。産業全体の価値を底上げし、エンターテインメントとしての可能性を拡げていく。その精神的な牽引役となることが、北日本カンパニーの使命だと考えています。

※「地域共創」の実例は後半参照

【パート2:INTERVIEW】

「 公楽のスタッフが踏み出す新たな一歩 マルハンの一員として描く未来像 」

藤原 智貴
マルハン北日本カンパニー営業企画部 営業戦略課
(公楽 元・営業統括部次長)

岩手で66年の歴史を刻んできた公楽のスタッフたちが、マルハン北日本カンパニーの一員として新たな航海に乗り出した。大きな転換期を迎え、現場ではどのような想いが交錯しているのか。元公楽のスタッフに、描く未来像と地域への想いを聞いた。

公楽で営業統括部次長を務めていた藤原智貴氏。藤原氏は1982年生まれの44歳。2004年の入社後、店長、エリア長、営業統括部次長を歴任し、21年間、公楽のパチンコ事業を支えてきた。現在はマルハン北日本カンパニーの営業戦略課に配属され、新たな環境での挑戦を始めている。

◆ ◆ ◆

──マルハン北日本カンパニーによる事業承継について初めて話を聞いた際、率直にどのようなお気持ちでしたか。

正直に申し上げますと、その瞬間に将来の姿が一瞬にして消えてしまったような感覚に陥りました。これまで公楽という会社をどうしていくべきかを考え、目標や理想のイメージを持って取り組んできた中で、それが終わってしまうという現実に直面し、戸惑いを隠せませんでした。また、生活がどのように変化していくのかを考え、先行きの見えない不安を感じていました。

不安から確信へ
「人」を信じた決意

──マルハンへ転籍という決断に至った要因は何だったのですか。

大きな要因は二つあります。一つは、説明を受ける中で可視化された福利厚生の手厚さです。給与面はもちろんですが、単身赴任や転勤に伴う手当、さらには子供の入学祝いや医療費のサポートなど、家族を含めて支えていただける制度が非常に充実していることに驚きました。岩手の地域企業として活動してきた私たちにとって、こうした業界トップ企業の手厚いサポート体制は非常に心強いものでした。

もう一つ、何よりの決め手となったのは「人」です。引き継ぎ業務の中で多くのマルハンスタッフの方々と接しましたが、仕事に対しても、人に対しても誠実に向き合う姿勢を強く感じました。この方たちと一緒に働きたいと思えたことが、最終的な決断に繋がりました。

──社内の雰囲気や仕事の進め方にどのような感想を抱いていますか。

外側から見ていた時以上に、一人ひとりのスタッフが持つ仕事への情熱と、求められる水準の高さに圧倒されています。挨拶一つとっても非常に活気があり、会社が掲げる理念が組織の隅々まで浸透していることを肌で感じています。当初は大きな組織ゆえの厳しさを想像していましたが、実際にはアットホームで、温かい気配りに溢れた環境でした。印象に残っているのは、事務所でマルハン社員の方が、元公楽の店長に対してパソコン操作や業務フローを根気強く、何時間も教えていた姿です。互いに忙しい状況下でも、決して急かすことなく親身に寄り添うその姿勢を見て、この会社の一員になれたことを改めて嬉しく思いました。

地域密着の想い繋ぎ
世界に誇る娯楽を提供

──公楽が築いてきた地域密着の歴史を、どのように繋いでいきますか。

公楽は60年以上、岩手の皆様に支えられてきました。特にお年寄りのお客様が多い地域特性もあり、アットホームな接客こそが強みであったと自負しています。公楽の良さとマルハンの組織力を融合させ、スタッフが丁寧にお客様とコミュニケーションを取り続け、より良い関係を築いていけると確信しています。

──今後の目標を教えてください。

まずはマルハンの高度なシステムや管理ツールを使いこなせるようになりたいです。アナログで行っていた業務がデジタル化され、効率的に管理されていることに驚きました。

これらのツールを活かして、生産性向上や経費削減など、業績改善に繋がる提案を自ら発信していきたいです。また研修で、「ジャパニーズ娯楽」という考え方に触れ、パチンコを日本が誇れる文化として再定義しようとする姿勢に深く共感しました。これまでは日々の業務に追われ、そこまで広い視点を持てていませんでした。今後は、新しい環境で学んだポジティブな変化を大切にして、地域の皆様に愛される娯楽の場を提供していきたいと考えています。

■公楽承継店舗(10店舗)のうち屋号変更した2店舗

【パート3:REPORT】

「地域共創」実例レポート(※一部)

マルハン敦賀店
(福井県敦賀市)
大型客船を歓迎する町おこしの共同企画

マルハン福井県各店舗
(福井県)
福井のプロバスケをサポート 移動式のバスケコートも用意

マルハン上小田井駅前店
(愛知県名古屋市)
夏休みの朝を彩るにゃんまるとラジオ体操

マルハン会津若松一箕店
(福島県会津若松市)
学生アルバイト発信の企画 学祭でパチンコの魅力を訴求

マルハン中標津店
(北海道標津郡)
まち美化を目指す行政と協定を締結

マルハン月寒店・美しが丘店・本社部門
(北海道札幌市)
タカシマファームと連携し田植えイベントを実施

https://web-greenbelt.jp/book/book-114311/