保安課長、依存防止対策など6点言及~全日遊連
グリーンべると2019年1月25日
1月18日に開かれた全日遊連の全国理事会で、警察庁保安課の山田好孝課長が行政講話を行い、「ぱちんこへの依存防止対策」をはじめ、「検定機と性能が異なる遊技機の問題」、「遊技機の不正改造の絶無」、「遊技機の流通における業務の健全化」、「ぱちんこ営業の賞品に関する問題」、「広告・宣伝等の健全化の徹底」の6点について言及した。
依存防止対策では、店舗の管理者に対し、
・リカバリーサポート・ネットワークの営業所内外における周知
・自己申告・家族申告プログラムの導入
・過度な遊技を行わないよう客に対する注意喚起の実施
・18歳未満の者の営業所立入禁止の徹底
等の確実な実施を要請した。
業界に対しては、「リカバリーサポート・ネットワークの相談体制の強化及び機能拡充」への支援や安心パチンコ・パチスロアドバイザーの適切な運用などを要望したほか、業界が検討している「専門医等の紹介」や「本人の同意がない場合でも家族申告による入場制限ができる仕組み」などの早期実現を求めた。また、昨年11月の行政講話と同様に、営業所内のATMの設置やギャンブル等依存症問題啓発週間の取組についても触れた。
以下、講話全文。
ただいま御紹介にあずかりました警察庁保安課長の山田でございます。
皆様方には、平素から警察行政の各般にわたりまして、深い御理解と御協力を賜っているところであり、この場をお借りして御礼申し上げます。
ぱちんこ業界の皆様におかれましては、東日本大震災や熊本地震の発生以来、継続して取り組まれている復興支援活動をはじめ、昨年は、西日本での豪雨災害における被災地支援活動に取り組まれたほか、北海道胆振東部地震に伴う電力不足による節電要請につきましても、迅速かつ真摯に対応していただいたと承知しています。加えて、低炭素社会実行計画に基づく節電・省エネルギー対策等の社会貢献活動にも積極的に取り組まれていることに対しましても、改めて敬意を表する次第であります。
さて、ぱちんこは、我が国の代表的な娯楽産業として親しまれておりますが、依然として、ぱちんこへの依存問題のほか、遊技機の不正改造事犯、賞品買取事犯、違法な広告宣伝等が後を絶たず、健全化を阻害する要因がいまだ多く存在することも事実であります。特にぱちんこへの依存問題については、国会や報道等においても大きく取り上げられるなど、国民の高い関心を集めております。
貴連合会を始め、業界の皆様におかれましては、業界が置かれている厳しい現状について危機意識を共有していただき、適切かつ着実に取組を進めていただきたいと思います。
さて、本日はお時間をいただきましたので、業界の健全化を推進する上で特に必要であると考えていることを何点かお話をさせていただきます。
最初に、ぱちんこへの依存防止対策についてお話しします。
ぱちんこを含むギャンブル等への依存問題については、平成29年8月にギャンブル等依存症対策推進関係閣僚会議において、「ギャンブル等依存症対策の強化について」が決定されたこと等を経て、昨年10月には、ギャンブル等依存症対策基本法が施行され、ギャンブル等依存症対策に係る国、地方公共団体、そしてぱちんこ営業者の皆様を含む関係事業者等の責務が明らかにされたところであります。
関係閣僚会議での決定において、「出玉規制の基準等の見直し」、「営業所の管理者の業務として依存症対策を義務付け」等がぱちんこへの依存防止対策の課題として掲げられたこと等を踏まえ、昨年2月、出玉規制の強化や管理者の業務への依存防止対策の追加等を内容とする風営適正化法施行規則及び遊技機規則の改正が行われました。
管理者の業務への依存防止対策の追加については、現在、営業所で行われている各種の自主的な取組が、管理者の業務として法令上義務付けられております。
営業所の管理者の皆様にあっては、
・リカバリーサポート・ネットワークの営業所内外における周知
・自己申告・家族申告プログラムの導入
・過度な遊技を行わないよう客に対する注意喚起の実施
・18歳未満の者の営業所立入禁止の徹底
等のぱちんこへの依存防止対策を各営業所において確実に実施していただくようお願いします。例えば、自己申告・家族申告プログラムについては、現在約2,200店舗が導入していると承知しておりますが、同プログラムを導入していない店舗にあっては、依存防止対策への取組姿勢が問われることになるということを認識していただきたいと思います。また、18歳未満の者の営業所への立入禁止についても、先程の「ギャンブル等依存症対策の強化について」でも「18歳未満の者と思われる者を把握した場合は年齢確認を行」うこととなっています。こうした取組が行われなかったために、18歳未満の者の立入りが認知された場合には適切な取締りを行う必要があるものと考えています。改めて、取組に遺漏のないようにお願いします。
また、関係閣僚会議の決定では、風営適正化法施行規則等の改正以外にも、業界において取り組むべき各種課題が掲げられているところであり、既に業界において積極的に取組を進めていただいていると承知しています。
たとえば、「リカバリーサポート・ネットワークの相談体制の強化及び機能拡充」については、引き続き、業界を挙げての支援をお願いしたいと思います。
また、「ぱちんこ営業所における更なる依存症対策」については、ぱちんこへの依存防止対策の専門員として、営業所に「安心パチンコ・パチスロアドバイザー」を配置する取組を貴連合会が中心となって開始し、これまでに30,000人以上の方が同アドバイザーの講習を受講されたと承知しています。今後、同アドバイザーがその役割をしっかりと果たすことができるよう適切な運用を図っていただきたいと思います。
また、「本人・家族申告によるアクセス制限の仕組みの拡充・普及」については、本人の同意がある場合には家族からの申告に基づいて入店制限をする仕組みを導入するなどの拡充が行われたと承知しています。
さらに、これまで検討が進められてきた「業界の取組について評価・提言を行う第三者機関の設置」についても、先般、業界において設立を決議されたと承知しています。
このように、ぱちんこ業界において、ぱちんこへの依存防止対策に積極的に取り組んでいただいているところであります。
他方、関係閣僚会議での決定に掲げられた課題の中には、「ぱちんこへの依存問題に詳しい専門医等の紹介」等、現在もその実現に向けて検討が進められているものもあります。
こうした検討中の課題についても、業界において、できる限り早期に対策等を実現できるようお願いします。
また、家族申告によるアクセス制限の実施については、平成29年12月に開催された関係閣僚会議幹事会における申合せを踏まえ、本人の同意がない場合についても、家族からの申告を受け付けることをお願いしています。競馬等の公営競技においては、本人の同意がない場合でも家族からの申告により入場制限を行う取組を既に開始していると聞いております。こうした状況をしっかりと踏まえ、ぱちんこ業界においても速やかに実効ある取組を開始することが求められているということを認識し、実現していただくようお願いいたします。
以上、ぱちんこへの依存問題への対策についてお話ししてきましたが、先ほど申し上げたように、ギャンブル等依存症対策基本法には、関係事業者の責務が掲げられ、皆様を含む関係事業者は、その事業活動を行うに当たって、ギャンブル等依存症の発症、進行及び再発の防止に配慮するよう努めなければならないとされたところです。基本法においては、政府がギャンブル等依存症対策推進基本計画を策定することとなっており、皆様の取組もこの基本計画に盛り込まれることとなります。このような状況において、皆様にあっては、これまでの取組を強化することはもとより、新たな取組についても積極的に検討していただくなど、従前にも増して依存防止対策により積極的に取り組んでいただきたいと思います。
たとえば、営業所内におけるATMの設置については、従前より、依存問題の観点から懸念が指摘されているところであり、こうした指摘に業界としてどう応えていくのか、よく検討されるべきものと考えています。いずれにせよ、ギャンブル等依存症対策基本法において、皆様を含む営業者にも明確に責務が課せられたことにより、ぱちんこへの依存問題の解決に積極的に取り組むことが社会的に求められ、注目もされていることを強く認識していただき、業界全体で真摯に対応していただきたいと思います。
加えて、基本法においては、毎年5月14日から同月20日までをギャンブル等依存症問題啓発週間と位置付けております。ぱちんこ業界の皆様が、この啓発週間においてどのような取組を行うかについても国民は注目しているところでありますので、ギャンブル等依存症問題に関する関心と理解を深めるという啓発週間の趣旨にふさわしい取組がなされるよう、検討を進めていただくようお願いいたします。
こうした取組の積み重ねが、ぱちんこへの依存問題の解決に寄与し、国民の理解を得るものとなることを期待しております。
次に、検定機と性能が異なる遊技機の問題についてお話しします。
誠に残念なことですが、営業所において遊技くぎを曲げて検定機と異なる性能を創出する事案は、いまだに継続して発生しております。これまでにも、そのような事案は射幸性の適正管理を侵害する悪質な不正改造事案であると申し上げておりますが、依然、客寄せ等営業者側の都合により入賞口付近のくぎを開け閉めしていた事案が発生しているところであります。
こうした問題が続くようであれば、業界の信用は大きく損なわれてしまいます。
昨年の規則改正では、射幸性の抑制の観点からではありますが、ぱちんこ遊技機にも「設定」の導入が認められ、皆様方の営業の自由度も高まり、結果としてくぎ曲げの抑制にも資するものと考えています。したがいまして、こうした改正を踏まえてもなお行われるくぎ曲げについては、とりわけ厳しく取締り等を行う必要があると考えています。
今後はくぎに関する問題を生じさせないという意識が、遊技機製造業者、ぱちんこ営業者の枠を超えて、業界の方々に広く定着することが必要だと考えております。貴連合会におかれましては、正しい認識を全国の各組合員に理解していただくよう周知徹底を図ることはもとより、業界全体をリードして、こうした問題の絶無に向けて積極的に尽力されることを期待いたします。
次に、遊技機の不正改造の絶無についてお話しします。
近年の不正改造の手口を見ると、不正改造された主基板に他の遊技機から取り出した主基板ケースやかしめを組み合わせることで、主基板ケースやかしめに不正改造の痕跡を残さず、外見上不正改造の発見を難しくした事案、不正改造した遊技機の設置場所が変わっても当該遊技機の位置を特定するためにGPSを付加するといった事案、払い出される遊技メダルを不正に増加させるため、払出しに係る信号を誤認識させる不正な基板を主基板に取り付けるといった事案が発生しているなど、ますます悪質巧妙化しています。このように悪質巧妙化している不正事案に対処するため、ぱちんこ営業者、遊技機製造業者という垣根を取り払い、事案の情報共有や有効な防止対策を業界全体で模索し、効果的な施策をより一層推進していただきたいと思います。
また、一般社団法人遊技産業健全化推進機構の活動については、もはや業界の健全化に欠かせないものとして、その役割の大きさを皆様も実感されているところではないかと思います。活動開始以来、立入検査店舗数が本年度の上半期までに2万7千店舗を超え、また、検査台数も約20万台を上回り、特に本年度上半期における検査の結果は良好であったと聞いております。これは、推進機構の活動が抑止効果という面で成果を挙げている証左だと思います。加えて、立入検査を独自に実施する団体等に対する助成事業や平成27年6月から実施されている遊技機性能調査についても、業界の健全化を進める上で、有意義な取組の一つであり、さらに、各営業所において依存防止対策が適切に行われているか、点検を実施していくことも予定されていると承知しており、推進機構の果たす役割はますます重要性を増してきているものと考えています。ただ、このような推進機構の活動に対する業界の理解は徐々に深まってきていると感じる一方で、いまだに推進機構の活動に対する理解が低い関係者もいると聞いています。
推進機構の活動が効果的に行われるためには、推進機構に対する各営業所の理解が不可欠であります。遊技機の不正の減少は推進機構の活動がもたらす抑止効果の表れであることを認識していただき、引き続き、業界全体で推進機構の活動を支援するなど、不正改造の根絶を目指す気運を高めていただきたいと思います。警察といたしましても、今後とも、推進機構と積極的に連携しつつ、不正改造事犯に対しては、厳正な指導・取締りを推進してまいりたいと考えております。
次に遊技機の流通における業務の健全化についてお話しします。
遊技機の流通については、その過程において型式の同一性が担保されるよう「製造業者遊技機流通健全化要綱」等が制定され、ぱちんこ営業者向けにマニュアルが策定され、各種研修等も行われるなど、業界における制度の理解も進んでいると聞いています。引き続き、遊技機の流通に携わる関係者が正しく制度を理解するための取組を継続していただきたいと思います。
平成28年4月以降に販売された型式の遊技機については、部品交換の際、変更承認申請に係る保証書の担保として、遊技機の性能が検定機と同一かどうかの点検確認を遊技機製造業者等が一台一台実施することとなりました。また、遊技機の営業所への設置時や部品交換時に行う遊技くぎの点検確認は、これまで目視で行われていたところ、平成29年4月以降に新台として設置されたぱちんこ遊技機については、目視による確認の補助として「くぎ確認シート」が使用されており、昨年2月以降に型式試験申請されたぱちんこ遊技機については全ての遊技くぎを対象とした「くぎ確認シート」が使用されていると承知しています。こうした取組により確認の精度も向上し、遊技機流通の健全化も進むものと考えています。運用を通じて更に改善を進めていただくようお願いいたします。
次に、ぱちんこ営業の賞品に関する問題についてお話しします。
まずは賞品買取事犯の根絶についてです。
賞品買取行為の規制は、ぱちんこ営業と賭博の一線を画す重要な規制であります。貴連合会におかれましても、今一度、このことを営業者一人一人にまで、周知徹底していただきたいと思います。
次に、賞品の取りそろえの充実についてです。
平成18年にぱちんこ営業者関係5団体による「ぱちんこ営業に係る賞品の取りそろえの充実に関する決議」がなされたものと承知しておりますが、今一度、この決議の重要性を認識し、そうした意識が業界の共通認識となるよう貴連合会が業界をリードしていただきたいと思います。
最後に、適切な賞品提供の徹底についてです。
ぱちんこ店における賞品の提供については、等価交換規制が設けられていることは皆様も当然御承知のことと思いますが、今一度、各ぱちんこ営業者の皆様にあっては、自身の営業所の賞品が等価交換規制を遵守したものとなっているか確認し、遵守できていない疑いのあるものは排除していただくようお願いします。
最後に、広告・宣伝等の健全化の徹底についてお話しします。
広告・宣伝等の規制については、依然として、特定の日に特定の遊技機を示し、イベント開催を告知して射幸心をそそるものや、隠語を用いて規制の目をかいくぐろうとするような悪質な事案が発生しており、非常に残念に感じています。こうした広告・宣伝を行うことは、現在業界で進めているぱちんこへの依存防止対策に逆行する行為にも当たるのではないかと思います。このような違法な広告・宣伝等については、今後も指導・取締りを行っていきますが、警察の指導・取締りによって健全化が進められるのではなく、業界全体で認識を改めていただき、業界自らの取組によって広告・宣伝の健全化が進められるよう努めていただきたいと思います。
加えて、広告・宣伝については、依存防止対策の観点からもその在り方が問われているところです。ギャンブル等依存症対策基本法においては、広告・宣伝を含む事業の実施の方法について、関係事業者の自主的な取組を尊重しつつ、ギャンブル等依存症の予防等が図られるものとなることが求められています。こうした基本法の理念を踏まえ、ぱちんこへの依存防止に資するような広告・宣伝の在り方についても、業界としての自主的な取組を検討していただきたいと思います。
ぱちんこ産業は、遊技人口が減少傾向にあるとはいえ、なお、非常に多くの方々が参加している娯楽産業であります。
課題は山積しておりますが、ぱちんこへの依存防止対策を引き続き最優先課題として位置付けるとともに、その他の課題についても、業界が一丸となって、一つ一つ迅速かつ真摯に対応していただきたいと思います。その実現なくして、ぱちんこは健全な遊技たり得ないと考えます。
今後のぱちんこ業界の皆様の御努力に期待いたします。
結びに、貴連合会のますますの御発展と皆様方の御健勝、御多幸を祈念いたしまして、私の話を終わります。
御静聴ありがとうございました。