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パチンコ業界ニュース

【特集】インバウンドで業界再構築を アミューズメントジャパン2025年1月27日


NTERVIEW 
Global Pachinko株式会社 
長北 真 代表

2022年にGlobal Pachinko株式会社を立ち上げ、外国人向けのパチンコツアーなどを手掛けている長北真さん(40)。遊技参加人口が減少する中で新たなプレイヤーを取り込みたい業界にとってインバウンド市場は見逃せない。だが多くの業界関係者が現時点でインバウンドの取り込みに現実味を覚えていない。訪日外国人が普通にパチンコを楽しむ──。長北さんには固定概念を覆すそんな未来が明確に描かれていた。 

1984年、沖縄県に生まれた長北さん。小・中学校時代にネットゲームに夢中になったことが、今に至るルーツの始まりだった。当時はまだインターネットの黎明期。主に海外のオンラインゲームに夢中になっていた長北さんは、必要に迫られて独学で英語を学んだ。英語以外の科目はまったくノータッチ。日本では進学できる高校がなく、英語が活かせるアメリカの高校に留学した。

留学先は米国東部コネチカット州の全寮制の高校。当時はまだ電話回線が主流の時代だった。「一生懸命LANを勉強して、学校の職員室からLANケーブルを引っ張ってきて、無理やり自分のパソコンにつなげてゲームをやっていました(笑)」。
 高校卒業後は日本に戻り、青山学院大学法学部に入学。学費を稼ぐためにアルバイトをしながら、病気もあって6年かけて卒業。学生時代には実益も兼ねてパチンコ・パチスロに親しんだ。

卒業後はネットワークエンジニアとしてオファーを受け、いくつかの企業で仕事をした。その後日本人向けカスタマーセンターの立ち上げの仕事でマレーシアに渡り、外国人が日本語でサポートできる体制づくりなどを手がけた。さらにオーストラリアやシンガポールのカジノでディーラーとして働いた。

「今後日本でカジノができることを想定していたので、カジノディーラーとしてキャリアを積んでみました。ただ、カジノで本当に稼げるのはスーパーバイザー以上。このポジションは今後、日本のIRで絶対不足するだろうと思いました」

そこで19年12月に再びマレーシアに渡ってカジノのスーパーバイザーを目指した。ところがコロナ禍が広がりカジノが閉鎖されたため、再びマレーシアでカスタマーセンターの仕事に就いた。

外国人向けパチンコツアー開始

その頃すでに、日本で外国人にパチンコを楽しんでもらう構想を持っていた。日本にIRができれば、パチンコ業界もIRのあり方に近づいて、外国人向けにサービスを展開していく流れになっていくだろう。そんな思いを抱いていた長北さんは、22年6月に帰国する直前から、日本で外国人向けのサービスを展開する事業の準備を開始。帰国後にGlobal Pachinkoを設立した。当初はホール向けのサービスを考えていたという。だが、まだ外国人客の取り込みに大きなリソースを割くホールはなかった。

そこで、まずは外国人から声を聞くことが大事だと考えてインバウンド向けのパチンコツアーを企画。予約して来てくれた外国人に有料でサービスを提供している。

最近では中国や韓国からの訪日客が九州のホールなどで遊技をしているが、Global Pachinkoでは中国人と韓国人をビジネス上のターゲットにはしていない。中国人も韓国人も日本でパチンコ・パチスロをすることについて、自国の法的リスクを負う行為だと認識しているからだ。

長北さんにはパチンコツアーを通じて外国人にパチンコ・パチスロの楽しさを知ってほしいという思いがある。

「ツアー参加者は、実際に遊技するとすごく喜んでくれます。パチンコもパチスロも当たれば楽しい。彼らにとってみれば、3000円使って4000円分の賞品がもらえるだけで『なんてこった!』となるわけです」

『みんパチフェス』の成果

昨年11月にベルサール秋葉原で開催された日工組が主催する『みんなのパチンコフェス』で、長北さんはインバウンドコーナー運営の一役を担った。当日は外国人277人が遊技を体験して、終日列が途切れないほどの盛況ぶりを見せた。

「日工組様の事前の会議では、初めてのことでどれだけ外国人が来るのか不安視する声もあったのですが、ぼくは300人は来ると予想していました。試打機が5台だと行列が途切れるわけがないと」

なぜそう思ったのか。

「パチンコは面白い遊びだという前提があって、その面白いものを共有するだけでいいからです。のるかそるかのギャンブルではなくて、大当たりまでのプロセスを楽しむのがパチンコ。このリーチはとか、この保留変化はもしかしてという期待感や、実際当たってからの高揚感を的確に伝えることができれば楽しくないはずがない。訪日客の6~7割はパチンコの存在について知っています。ただ、実際に試すにはどうしたらいいのかがわからない。店舗に入っても何もリソースがないのが今の状態で、それらをすべて提供するイベントであれば、絶対に来てもらえると思いました」

『みんなのパチンコフェス』におけるインバウンドブースの盛況ぶりで、ようやく業界内にも外国人ユーザーの取り込みと向き合うムードが生まれ始めたと、長北さんは肌で感じている。

「これまでは暗中模索という感じだったと思います。例えば過去にマルハン様が実施した個社のインバウンド向けイベントでは、9割の参加者がもう1回遊んでみたいという感想を持っていました。これだけ訪日客が来ているにも関わらず、インバウンドがパチンコホールにお金を落とさない。それはアプローチを間違っているだけだと思っています」

『みんパチフェス』は訪日外国人旅行者が多い秋葉原での開催だった。日工組の集計ではパチンコブースに足を運んだ外国人の半数以上はアメリカとヨーロッパからの訪日客だった。

「秋葉原には中国人がたくさん来ているという認識は、もはや大きな間違いです。現状で秋葉原にいる中国人は全体の1割にも満たない。これはインバウンド全体の風潮ですが、中国や韓国に住んでいる人で、日本に旅行して秋葉原に行くことはもはやイベントにならない。日本で秋葉原に行ってすごく楽しかったという話を共有しても、誰も感動しない。彼らにとっては、日本で西表島に行ったぐらいのことが自慢になるんです」


以下は長北さんとの一問一答

プレイヤーがプレイヤーに教える

──遊技業界のインバウンドに対する現在の状況をどう見ていますか?
長北 『何もしていない』が近しい表現になると思っています。本質的に目指さなくてはいけないゴールは、プレイヤーがプレイヤーに遊び方を教えやすい環境を整えること。考えてみてください。パチンコが登場して90年の歴史において、店舗やメーカー、組合などが、未経験者に対してパチンコ・パチスロの遊技方法を教えたことがあったでしょうか。個別のイベントなどではあったと思いますが、店舗で継続して教えている例はないはずです。では誰が教えたのか。プレイヤーが教えてきたんですよね。90年間ずっとそれをやってきた。であるならば、そこがひとつのゴールで、大事な視点だと思っています。

──確かにパチンコ・パチスロは友人、知人、職場の同僚、先輩に教えてもらった人がほとんどだと思います。
長北 店舗スタッフさんが外国人に一生懸命教えたり、多言語のパンフレットを作ったり。そうした行為はもちろん無駄ではないのですが、ゼロからイチにするための努力でしかありません。このゼロイチが非常に難しいわけです。ホールにいるお客さんがすべて英語で会話ができるわけではないので、ホールに入ってきた外国人と日本人客がどうコミュニケーション取るのか。それこそが成し遂げなければならない課題なんです。その課題をどう解決していくか。いまそこに取り組みはじめているところです」

──どんなことから始めるべきですか?
長北 まず機種ごとの英語の遊技説明書をお店に置いてください。『北斗の拳』であれば『北斗の拳』の英語版の遊技説明書。なぜ必要かというと、それを使うことで日本人プレイヤーが教えやすいからです。英語を話せないベテランプレイヤーが、「これ見て。今こうなっているから」と説明書を指差すだけでコミュニケーションが取れるようにしてほしい。プレイヤーがプレイヤーに対して教えることをお店がサポートしてくださいというのが、今の私の主張です。

──ホールスタッフが外国人に遊び方を教えるのではダメですか?
長北 スタッフがハンドルを代わりに握ってあげたり、目押しをしてあげたりすることはできませんから。スタッフが各機種のゲームフローについて100%理解するのも無理ですよね。一番詳しいのはプレイヤーですから。そのプレイヤーの協力を得ずに新規外国人を呼び込むことは不可能。そのためには一旦、英語で作られたドキュメントを各機種で作る必要があると思っています。もしいま外国人が来た場合でも、スタッフが店内で聞かれる質問は10パターンもありません。それはマニュアル化すれば済むことです。

外国人向けに特化したホールも

──業界関係者からは、訪日客が来ないような地域でインバウンドの取り込みはできないという声も聞かれます。
長北 それは大きな誤解です。先ほどもお話したように、今後は日本のありとあらゆる地域に外国人が行くようになります。世界の人口60億人の中の6000万人が毎年日本に来るわけです。すると一定の割合で日本に来たことがある人の総数は増えていく。それが2回目、3回目…となったときに、3回目、4回目、5回目は大阪や東京へ行かない可能性が大きい。直接長崎に行きましょうとか、青森に行きましょうという話になってくるわけです。そのときに地方都市が訪日観光客から効率よくお金をいただけるような仕組みを整えていかなくてはならない。ギリギリで営業されているような地方都市のパチンコホールの方が、本当は頑張ってインバウンドを集める必要があると思います。

──逆に地方都市で訪日外国人を集める手段にパチンコを使うということも考えられますか?
長北 「この地域のあのホールはすごいぞ」という評判で外国人がその街を訪れるかもしれません。あそこの店ならスタッフ全員が英語を話せる、店内告知も全部英語だといったことが差別化につながるはず。岐阜県高山市の『パチパチベガス』さんのように、外国人向けに特化した形にするのも一考です。インバウンドをメインにするひとつのメリットは、新台が一切いらないこと。中古機で十分ですから。

──まだインバウンドに対してそこまで考えている店舗は多くないと思います。
長北 現状はまだ、既存の枠内でしか考えられないでしょう。なぜならその結果や数字が見えていないからです。でも、みんパチフェスでの盛況ぶりをみて、外国人のパチンコに対する認知度は高いという数字がちょっと見えてきた。意外と来るかもと思っている業界関係者の方は増えてきていると実感しています。

──その先は、日本に行ったらパチンコが楽しいと、外国人自身が広めてくれることですね。
長北 もちろんです。外国人プレイヤーから外国人プレイヤーへという流れができれば、加速度的に広がるはずです。例えば外国人のインフルエンサーがパチンコの動画を撮って配信する。そうなってくると、アメリカ在住のパチンコインフルエンサーみたいな、謎の存在が現れるわけです(笑)。その動画を見て、我も我もとホールに足を運んで外国人が動画を撮る。そうなったらもう本当に止まらないですよ。

──将来は日本人プレイヤーが隣に座った外国人に打ち方を教えあげるような未来がくるでしょうか。
長北 Global Pachinkoでは、低料金で稟議を通さず、店長さん等の判断のみで、ネット上でダウンロードできる素材を作っていくことを始めています。まずは休憩札の日英対応版を作ってみました。その先はプレイヤー間のコミュニケーションの促進。先輩プレイヤーとビギナーが、円滑にコミュニケーションを取れる仕組みです。これが実現すればパチンコ業界全体を変えることになるかもしれません。それが誰も不幸せにならないパチンコのあり方かなと思っています。今はギャンブルの側面、勝ち負けの側面を強調しすぎた結果、それしか求めないプレイヤーが集まっている。それは日本人プレイヤーにとっても良くないことなのではないでしょうか。

インバウンドは黒船の来航

──現在はインバウンドという言葉自体が壁を作っている感じもします。
長北 そうですね。ただ、いいこともあります。インバウンドという概念は、かつての黒船の来航と同じです。インバウンドという黒船が来航したことによって、メーカーもホールもプレイヤーも全員協力しよう、さもなければ全員が死ぬだけだと。そういう幕末みたいな時期になったのかもしれません。であれば、その後の文明開化でパチンコ業界のみんなが繁栄すればいい。パチンコが日本文化として開花したときが、初めて社会の一部としてパチンコ・パチスロが認められる時なのかもしれないですね。

──世の中からも見られ方も変わりそうです。
長北 アニメもゲームもそうでした。日本国内だけでずっとやっていた時代は、よくないものとされていました。それが海外で認められるようになって、日本の文化としてしっかり世界に受け入れられて、日本にお金を流してくれるようになってきたから、国を挙げて取り組むまでになりました。将来的にパチンコ・パチスロがそのポジションを取れるかもしれないですよね。私個人としては、もちろんそこも見ています。近い将来、経済産業省がパチンコの話を真剣に聞いてくれる日が来る。それは来年かもしれないし、再来年かもしれないという話をしているんです。

文=アミューズメントジャパン編集部
月刊アミューズメントジャパン2月号掲載記事を転載致しました。
聞き手=野崎太祐(本誌)

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