カジノ産業のカンファレンス&展示会 シンガポールで開催(後編)
アミューズメントジャパン2022年9月16日
カジノ用ゲーミングマシン、周辺機器および関連サービスの展示会&カンファレンス「Global Gaming Expo Asia」(通称G2E Asia)が8月24日から26日、シンガポールのIR施設「マリーナベイ・サンズ」で開催された。大手スロットマシンメーカーの出展がなかったため、オンラインギャンブル関連企業の占めるスペースがより目立つ展示会になった。 文・写真=田中剛/text & photos by Tsuyoshi Tanaka
2007年に始まり、アジア地区のカジノオペレーターの95%が参加すると言われるまでのイベントに成長したG2E Asiaは例年マカオ特別行政府で開催されてきた。新型コロナウイルス感染症の拡大で、2000年、2001年とランドベースでのイベントを中止。今年、いまだ厳しい水際対策を継続しているマカオでの開催を断念し、会場をシンガポールに移して「G2E Asia 2022 Special Edition: Singapore」と銘打って、3年ぶりのランドベースでの展示会&カンファレンスを開催した。
ブース出展企業は約60社にとどまった。IGT、SGMS、アリストクラートといったスロットマシンメーカー大手が参加していないこともあり、会場内にゲーミングマシンの展示が少なかったが、全編に続きいくつかのブースを紹介する。
カジノ施設で重要な機能でありながらプレイヤーには見る機会がないのが、施設内に設置された数百台ものCCTVカメラを統合するサベーランス(監視管理)システムだ。イギリスに本拠地を置くSynectics Systems Groupのサベーランスシステムはカジノ業界では世界で100施設以上に導入されている。カジノ施設は最も要求が厳しい領域のひとつであるため、映像品質だけでなく録画映像の欠損を生じないための機能、様々なメーカーの映像機器との柔軟な接続性などで高い評価を得ている。
目新しいメーカーはスロベニアのメーカーinterblockで、外部から見えない閉鎖型のブースを作りEGMを展示した。カジノに設置されているETG(機械が自動でゲームを進行する)は筐体の周囲に6人~8人が着席できるものが一般的だが、同社が提案しているのはハイブリッドETG(人間のディーラーがゲームを進行する)と同様に、プレイヤーは自分の端末から賭ける筐体を選択できるタイプ。ひとつの筐体で数十人のプレイヤーに遊んでもらえるので、スペースの効率を高められる。G2E Asiaには初参加だが、北米、南米、オーストラリアのほか東南アジアでの導入実績がある。
オンラインカジノ向け
プロバイダーの出店目立つ
EGMメーカーが少なかったせいか、オンラインカジノ事業者向けのソフトウェアプロバイダーや決済システムプロバイダーの出展が目立った。endorphina(チェコ共和国)はオンラインカジノ事業者にオンラインスロットゲームを提供している創業10年目の開発企業。アジア地域のマーケットへの参入を本格化させる考えで、G2E Asiaに初めて参加した。
CreedRoomz(アルメニア共和国)が展示したロボットアーム型ディーラーも来場者の目を引いていたのは。同社はオンライン・ライブカジノ事業者にソフトウェアを提供するIT企業で、ライブカジノ用の配信スタジオも自社で運営している。同社がスタジオで雇用するクルーピエ(ディーラー)の大多数は若い女性だが、2021年にロボット・ディーラーをリリースした。新たに開設したライブカジノ「ROBOT HALL」は、「ヒューマンエラーを排除しディーリングの精度を高め、オペレータはランニングコスト(人件費)を削減できる」のがウリだ。
ブースにいた同社の幹部は、「いまはライブカジノで稼働しているが、いずれはランドベースカジノにも導入され、プレイヤーはタッチパネル操作でベットすることになるだろう」と語った。現状、ライブカジノ配信スタジオで働いているディーラーのほとんどは若い女性ディーラーだが、「運営コストを低減したい事業者もいるし、ゲームそのものに集中したい人だっている。世界にはいろいろなニーズがある。これは選択肢のひとつなのです」とのことだ。
(執筆者)
タナカツヨシ:パチンコ産業の経営層向け専門誌『Amusement Japan』を発行する(株)アミューズメントプレスジャパン執行役員常務。パチンコ産業の取材やユーザー分析の傍ら、世界10カ国でカジノを取材。
Tsuyoshi Tanaka is an executive officer of Amusement Press Japan Inc. which is running a prominent PACHINKO industry media brand 'Amusement Japan'. He is an editor/a researcher whose field is the pachinko industry, and on the side, he also studies the casino industry. He's visited casino venues as an editor in 10 countries.