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大遊協が早野教授を招き、大阪府ギャンブル実態調査研究成果の説明会 遊技通信2024年6月30日

大阪府遊技業協同組合(大遊協、平川容志理事長)は6月21日、都留文科大学の早野慎吾教授を招いて「大阪府のギャンブル依存対策のための大阪府ギャンブル実態調査研究成果説明会」を同組合会館会議室で行い、組合員のほか日遊協近畿支部、関西遊商、回胴遊商近畿支部の関係者など約30名が参加した。

冒頭に平川理事長が、開催意義とこれまでの経緯を説明。2016年のIR推進法の施行から2023年4月に大阪府と市が申請した夢洲でのIR整備計画が認定を受けた流れの中で、パチンコは依存問題の矢面にされ、2022年10月に大阪府議会でギャンブル依存症対策を推進する条例が成立するに至った。自治体独自で条例を制定する全国初の事態となり、のめり込み問題がギャンブル依存症と同じように取り扱われること、国民(府民)にも同様のイメージを持たれることに、パチンコ業界として危機感を抱いたため、エビデンスの必要性を感じ、大遊協では2023年6月23日に大阪市天王寺区のシェラトン都ホテルにおいて、早野教授を招いて「社会学から見たギャンブル依存~現場の皆様がギャンブル依存を正しく理解するために~」と題した講演を催した。加えて1万サンプル規模のギャンブル依存調査を継続的に実施し、早野教授が東京都遊技業協同組合と実施している4万サンプルの調査結果との比較を含めて、大阪府の実態を明らかにしていくデータ収集を実施依頼していた。
なお、2023年7月初旬には西日本エリア版の新聞3紙(毎日新聞、産経新聞、朝日新聞)の朝刊に、大遊協が取り組む依存症対策をテーマにした全面広告を掲載するなど、大遊協が2003年から行ってきた依存(のめり込み)問題対策を広く知ってもらう取組みも行っていた。

「降りかかる火の粉は払わねばならない」という旨の平川理事長の経緯説明を受けて、早野教授は大阪府の関する調査研究について次のような説明を行った。

【早野教授の説明要旨】
政府および運営事業者はギャンブルに関連する問題を最小限に抑えるために、責任あるギャンブル(RG)(※1)の取組みとプログラムを実施する必要があると思う。RGの取組みとプログラムは、ギャンブル参加者が支出を妥当なレベルに抑制できることを支援しなければならないでしょう。大遊協の依頼のもと2023年12月、大阪統合型リゾート(IR)において、責任あるギャンブルに関してオンラインによる1万サンプル規模のギャンブル依存調査を実施した(※2)。
その対象は公営競技、宝くじ、パチンコ・パチスロなどと比較しながら検証し、結果としてパチンコ・パチスロにおいては特有の特異要素は見られなかった。パチンコ・パチスロは宝くじや公営競技と比べ継続率(のめりこむ傾向)が最も低く、1年以上離れていた人の場合の回復率(ギャンブル依存が疑われない値になった割合)は、高い数値だった。
大阪IRカジノについてはその説明趣旨をみると科学的根拠は見受けられず、パチンコ・パチスロを問題視する自治体関係者の言動面がクローズアップしているように見受けられる。RGはギャンブルに伴う社会的リスクの発生を抑制することを目的としている。科学的根拠を欠いた取組み・プログラムがギャンブル依存の本来の解決にはつながらないことは、海外の研究成果からも明らか。調査ではパチンコ・パチスロの参加者の8割以上が年収600万円以下であり、パレートの法則(※3)で構成されるとみられるカジノとの比較では、参加する客層が相反していると見受けられる。大阪IRカジノにおけるギャンブル依存症対策は、カジノに参加する客層に合わせた対策が望まれる。

※1 責任あるギャンブル(Responsible Gaming):ギャンブリングに関連して起こる可能性がある弊害について、それを予防し、できるだけ少なくするためのフレームワークとその実践のことを意味する用語
※2 調査について。2023年12月22~26日にかけ、大阪府内の1万人を調査(15万6,290サンプル配布)に、ギャンブル依存と大阪IRカジノに関するインターネット調査を行った。基本は9項目(性別、職業、年収など)、ギャンブル関連36項目(ギャンブル行為、費やした時間と金額など)、大阪IRカジノに関する項目など
※3 パレートの法則:上位2割のグループ(富裕層等)が全体を支えているというイタリアの経済学者ヴィルフレド・パレートが提唱した学説

【早野教授の所感】
早野教授は2020年に東京都遊技業協同組合(阿部恭久理事長)から依存問題について調査依頼を受けた際、研究者の立場から客観的な姿勢を貫くことにこだわっていたが、阿部理事長からは、業界にとって都合の良い報告を求めているのではなく「本当の実態が知りたいだけ」との方針を確認して客観的調査を継続している。

①ギャンブル等依存症対策基本法では、公営競技とパチンコは規定されたが、世界的に宝くじは依存症対象とされており、調査では対象として組み入れた。その中で宝くじの参加数と継続率(常習性)は、約48%と多い傾向がある。パチンコは約26%。宝くじと公営競技は、投資額は青天井であり、パチンコの遊技(時間消費型)による投資額には限界があり、期待報酬効果(射幸性)が低く、持続性も高いとはいえない。

②娯楽(レジャー)の種類が多様にあるかどうかの地域差
都道府県別の調査結果からみると、人口の少ない地域ほど依存症の疑いの数値が高い傾向が見られた。これには娯楽(レジャー)の種類が大きく関係していると考える。人口が少ない地域は娯楽が少ないため、ギャンブルに向かう傾向があるのだと思われる。その点で大阪の場合は、全体から見ても高いとはいえない。実際、都道府県別にみた依存度は低い値だった。

③調査継続の意義
大遊協では、今後もこの調査について継続する考えでいる。流行の変遷や経済・社会情勢により移り変わりはあるかもしれないが、継続して調査することにより、注意すべき対策が見い出されると考える。調査・エビデンスの積み重ねは大変意義のある取組みだと自負している。研究者として、変化や兆しがデータで顕れた場合は、速やかに問題提起していく姿勢でいる。

④エンタメ化の重要性について
今、一番成功している傾向にある中央競馬のエンタメ化は見習う必要があるのかもしれない。エンタメとはエンターテイメントの略語であり、人々が楽しむための様々な活動やコンテンツを指す言葉。人々の暮らしの一部として溶け込み、日常生活に彩りを加える役割を果たしているといえるが、中央競馬は何もしていないのにライトユーザーを多く取り込んで依存問題を薄めている。

⑤遊技機の高騰化に対する憂慮
パチンコは身近で手軽な遊技だと捉えているが、今の遊技機価格の高騰化については憂慮される。ホール営業、遊技ファンを苦しめる遊技機価格の高騰化がパチンコ業界にとって新規(ライト)ファン開拓につながるのかが理解できない。業界としてパーパス「遊びの力で、心を元気。」というパチンコ業界全体の連携によるエンタメ推進が必要不可欠になっている。

都留文科大学 文学部 早野慎吾教授
専門は言語心理学、社会心理学。特にフィールドワークとデータ解析を得意としている。ギャンブル依存とギャンブル広告の因果関係を研究対象としていたことで、パチンコ業界から研究依頼を受けるようになる。現在は心理学的立場からAIによる人工感情の開発も行っている。

 

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