藤商事は2月6日、代表取締役の異動(社長交代)を発表し、4月1日付で新たに代表取締役社長に就任した松下智人氏。低迷が続くパチンコ市場や、新規ファンの掘り起こしなど課題山積の業界に対し、どのように牽引していくのか、その胸中を聞いた(4月14日、東京開発事業所にて)。

――新社長に就任されての今の率直な心境と、今山武成前社長から受け継いだものをお聞かせください。

業界の厳しさが一段と増してきています。藤商事としては、ホール様とメーカーが両輪となってそれら組合も含め上手く融合させながら、本気で業界復活に向けた活動に尽力していきたいですね。

昨年は社長就任までの準備期間として、全国450名余の社員と面談をしてきましたが、営業畑を長く歩んだ今山は昔から「遊技者目線」をいつも意識していましたね。お店に買ってもらえるものを作るのではなく、ファンに楽しんでもらえる機械作り、そのサービスを提供し続ける必要があると。開発も営業も、機械を通して「何をファンに提供するのか」を都度判断し、ファンファーストに立ち返っての機械開発を目指しています。

――ファンファースト、そういう意味ではBIGスタートを搭載した『貞子』のヒットは大きいですね。

パチンコファンにアンケートをとると、打たない理由に「回らない」がまず上がりますね。プロデューサーの「(ヘソを)デカくしちゃいますか」という一声で思い切りましたが、たまたまSANKYOさんからも同時期にデカヘソが出たので僕らの考えは間違っていなかったと確信しましたね。

――『地獄少女』でもBIGスタートへの特別ルートが話題になりました。

特別ルートからの入賞だけになってしまうとパチンコ本来の釘と玉で遊ぶ部分がなくなってしまうのですが、やっぱりパチンコならではの「玉の遊び」は少なくとも必要だという判断で、玉の入り方のバランス面で試行錯誤を重ねました。

玉の遊びという部分では、弊社は羽根モノを作った経験がないのでノウハウを含めて、他社とタッグを組んで作れないかなとも考えています。

――今問題になっているのは、例えば通常確率1/128と言っても初回がほぼカス当たり、さらにLTもあったりとライトファンが混乱している状態だといいます。

そうですね。1/99以下なら甘デジコーナー、1/199~1/230以下ならライトミドルコーナーと昔ながらの確率帯で島割をしてしまうと、ファンに誤解を招く事態になります。それをどうにか目印になるようなものを作ってもらえないかという声が一昨年から出始めて、射幸性に合わせて4段階で区分けしようと議論を重ねています。

――4段階の区分けですか。

今は通常時1/199のLT機でも、実質の射幸性レベルがMAXに近いものがたくさんあります。確率だけでなくMY、玉単価の数値も加味して、ファンにも分かりやすい目印を機械に表示する施策を考えています。

――そうした理由で負け額が増え離反したファンも多いですし、甘デジコーナーも復活させたいですね。

当社では1/99なら1/99なりの出玉で遊べるものを用意しています。低貸しがどんどん広がった事情もよく分かりますが、低中射幸機プロジェクトの目的の一つに4円回帰があります。ホール様にはもう少し4円島を増やしていただき適正粗利に戻していただく、その努力をホール様とメーカーで今やらないとこの先の15年も変わりません。失われた15年を取り戻したい、次の15年に向けてのターニングポイントを作りV字回復させるんだ、その一心で動き出しています。

――まずはなんとか4円回復が急務ですね。

メーカーが作ったものをホール様にはまず一度導入していただいて、結果について次はどう改善していくかを互いに模索していくことが必要ではないでしょうか。

――松下社長に関してうかがいますが、1989年に入社されていますね。

はい、実は3回面接を受けています。元々は開発希望でしたが人員の問題で営業本部長と面接して合否を待っていると、本社から「明日から来れますか」という話になり入社しました。初めは経理職でしたね。

――開発希望から経理へ?

当時はパソコンがなかったので苦労しましたが、経理を学ぶために勉強して半年で簿記資格も取りました。今思えば受注はFAXで入金もあの頃は手形でしたし、正直処理をこなすのが大変な頃でしたね。そこから色々ありましたが、藤商事を社会的に認めてもらうために上場を目指そうということで、平成14年あたりから今の村上和繁専務と上場への準備を進めました。平成19年2月に上場する時は、役員からの労いで二人とも証券取引所に連れて行ってもらいましたね。

――そこから総務部長、開発本部長、代表取締役専務と歴任されています。

ようやく開発にいった頃は『リング2』がヒットした時で。あの頃は、夜通し打って面白い機械だったら受けるんじゃないかと仲間内で夜中の試射をやっていましたが、最後は二人しか残っていなかったと懐かしい思い出もあります。

――ホラー系に付きものですが恐怖体験はなかったですか?

『リング』に関しては企画承認後に毎回神社でお参りしていましたよ。僕が開発にいる頃は続けていましたね。

――昨今はアニメIPを扱う機会が加速しました。これからはやはりアニメIPを中心に?

そうですね。アニメIPはコンペ形式などで取得料が跳ね上がっていることもあり、新たに子会社「株式会社Gene Entertainment」を立ち上げました。今のように製作委員会に出資するという手法ではなく、それ以前の映像や音声といった実務に製作部隊として入ることで取得費用も抑えられるメリットが大きいですね。熱量がある社員の「好き」も高まっていますし、やって良かったとは思います。

――ファン人口回復の切り札になり得そうでしょうか?

それもファンファーストで、ファンが何を望んでいるのか探求心を高める必要もあります。そうした機械ができた際には、ホール様にも「これが求められています」ということをしっかりと伝えていく、この連動が課題でしょうか。ですから、どのメーカーよりもファン寄りでいたいですね。

当社の場合、今以上にファンミーティングや一般試打会を通じてファンとの接点を高める施策をやっていきますし、集約した声をどんどん生かしてファンに期待されるメーカーになります。それは機械だけのファンではなくて、パチンコを知らないアニメファン、協力会社、ホール様、株主など藤商事に関わる全ての方にファンになってもらう、そういう意味でもっと広い概念でファンを大事にしてほしいと社員に伝えています。

――これからの新たな藤商事に期待しています。ありがとうございました。

株式会社藤商事 松下智人代表取締役社長

1971年生まれ、兵庫県出身。1989年に入社し、2007年管理本部総務部長、2016年執行役員開発本部長などを経て、2019年 ㈱オレンジ、2021年 ㈱JFJ代表取締役社長へ就任するなど要職を歴任。2022年取締役専務執行役員として開発本部、経営管理本部を担当し、2025年代表取締役専務執行役員を務め2026年4月に代表取締役社長へ就任。趣味はパチンコ。