賞品流通が抱える課題は消費税だけなのか
遊技通信2023年3月2日
景品買取所におけるインボイス対応が、ある企業が開発したシステム・機器を導入する動きをキッカケとして、進んでいる印象を持つ。
インボイス制度の概要は省くが、パチンコ店周りの課題として賞品流通、特に「お客様から賞品を買い取る事業者における会計処理」が指摘されている。景品買取所に賞品を持ち込むお客様からインボイスを受け取れないと、景品買取所が仕入税額控除を受けられずに消費税の納付負担が高くなる。そうすると、景品買取業者がビジネスとして成り立たなくなる可能性と、三店方式が行き詰まってしまう可能性の2点が指摘されている。パチンコ店・景品買取所・流通業者から構成される三店方式を維持するうえでは、景品買取所での仕入控除ができるかどうかがポイントとなるため、景品買取所がインボイスに対応することが求められる。
そこで、インボイスを発行できない個人から物品を仕入れるケースを想定して、国税庁が特例措置として認めている古物商の仕組みを賞品買取業者に導入する動きがある。古物商には、買取帳簿を保存することで仕入税額控除ができる「古物商特例」というものがあり、そのためには賞品買取業者が『古物商の許可の取得』と『古物商としての実態』の2つを満たすことが求められる。後者の『古物商としての実態』のポイントとしては、賞品のみしか買わないというのは不可であり、時計・宝飾品類や金券類なども買い取ることが求められるので、注意が必要だ。古物商を巡ってはそのほかにも遵守事項がいくつかあるものの、古物商特例の活用が賞品流通のインボイス制度にかかる問題を解決する策として最も現実的と考えられている。いくつかの地域で、賞品買取業者が古物商の許可を取得するよう、調整段階に入っている。
ただし、賞品買取業者が古物商として運営する際に、ハードルがないわけではない。特に「取引相手の確認義務」に関しては、古物商は1万円以上の物品を買い取る際には本人確認とその記録の記載と保存が義務づけられている。1万円というのは1点あたりではなく総額であることに注意が必要で、賞品買取業者の場合は賞品の上限価格が9.600円であることに注目している。そこで「賞品1点ごとに買い取った」として帳簿を作成する方向性が示されているが、買取総額が表示される機器との整合性などが課題として残されている状況だ。
そのような状況下で、賞品買取業者と卸業者が昨年5月に全国組織を立ち上げた。同組織はインボイス制度への対応を目的としているが、ある企業が開発した、景品買取所での買取履歴を記録して、USBメモリなどに保存できる装置を導入するという意図が含まれているようだ。とはいえ、賞品流通の関係者に聞くと、この装置がないと景品買取所を運営できない、というわけではないようだ。同様のシステム・機器が他の企業からも提供される可能性があるので、拙速な対応は慎んだほうがよさそうだ。
建前が通じない世の中に
同じ風俗営業で(ただし性風俗なので別と言えば別ですが)、宮城県でのソープランド経営者が売春防止法違反の疑いで逮捕されるという事案が起きている。
報道によれば、未成年の客を入店させたことが逮捕に踏み切った理由とされているが、法令を厳密に解釈すればソープランドの営業自体が違法の公算が大きいと言う。言うまでもないことだが、店舗型性風俗特殊営業であるソープランドは、「浴場の施設として個室を設け、当該個室において異性の客に接触する役務を提供する営業」とされ、売春は想定していない。営業者は入浴料を取り、個室内で異性同士の性行為があっても売春ではなく、あくまでも自由恋愛であるとの「建前」になっている。警察行政は、性風俗業界が反社会勢力と繋がってしまうよりも、このままある程度は「黙認」していたほうが社会的によいと見ているようだが、社会の風潮次第では判断も変わってくる可能性があるかもしれない。
賞品流通にも、似たような「建前」が存在している。現状では、悪質な営業方法をしている事業者が摘発されているように見えるが、建前や黙認が認められにくい世の中なので、今後はどうなるか分からない。ソープランドの事案を他山の石としたほうがいいだろう。