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【パイオニア50周年インタビュー】野口 浩史氏 事業推進部/総務部責任者 シンプルさこだわりハイビスカスと共に グリーンべると2022年5月9日

今年5月に創業50周年を迎える老舗パチスロメーカーのパイオニア。いわゆる30φコインを使用した沖縄仕様パチスロ普及の先駆者であるとともに、『シオサイ』や『ハナハナ』シリーズに代表されるハイビスカスランプを用いた告知演出は、いまや同社製パチスロ機の代名詞でもある。これからを担う野口浩史氏に話を聞いた。

創業50年目を迎えた今冬──。同社初の試みとなるテレビCMが全国で放映された。CM内で謳われた「これからもハイビスカスとともに」のフレーズ。野口氏へのインタビューからは、その「想い」が滲む。

──テレビCM、拝見しました。50周年が華やかに感じました。

ありがとうございます。弊社にとって「ハイビスカス」は、ともに歩み成長してきた存在です。元は南国の自然物ですが、弊社は光って「=ボーナス確定」、「=何かの示唆」というシンプルでいて際立つ演出として、業界内で認知させてきました。これはもう胸を張って言えます。

だからこそ、これからの成長テーマとして、CM内にメッセージを添えさせていただきました。

──全国放送は思い切りましたね。

ご存知の通り、弊社はハイビスカス演出のようにシンプルなゲーム性がウリのメーカーです。ただ、(認知度に)地域性のあるのも事実です。テレビCMでは「やっぱりパイオニアを知ってもらおう、(パイオニアの)ハイビスカスを知ってもらおう」ということで他のメーカー様とは違い、機種ではなく、あえて企業イメージを前面に押し出しました。

──ハイビスカスに対する想いも、相当なこだわりを感じます。

やっぱり20年以上を費やし、色々試行錯誤してきましたからね。例えば、ハイビスカスの形、色味、配置、点滅の仕方やスピードなど様々です。

そうそうパネル背景がオレンジなのも夕焼けではなく、「朝焼け」という創業者・野口三次のこだわりです。「夕焼けは沈んでまうから朝焼けの方がええやろ」っていう(笑)。

──それは知りませんでした。歴史も想いも、奥深さを感じますね。

弊社で初めてのハイビスカス登場は、1997年の『シオサイ』でした。

それまでは出目を楽しむ機械が多く、「もっと誰でも楽しめる機種にしたい」という狙いで「ボーナス告知ランプ」を搭載しました。同じ流れで『シオサイ』には、その機種名・デザインの南国イメージから連想しやすい「ハイビスカス」が選ばれたのは、すぐのことでした。

──それが始まりであり、貴社の転機だったわけですね。

そうです。『ハナハナ』シリーズとして累計約30万台。その弾みは『シオサイ』が作りました。97年というのは、パチンコの社会的不適合機撤去のタイミングで、ホール様からパチンコ機がごっそり外れました。代わりになる遊技機として、パチスロで新鮮味のある30Φ仕様、その新台である『シオサイ』が刺さりました。

さらに手応えを感じさせたのが、ユーザーの存在です。当時、告知機のシンプルなゲーム性からご高齢のお客様がよく打たれていました。でも、その横でリプレイ外しをする若者も好んで打っていたんです。当時そういう共存は珍しく。若者がそうやって打って出玉を作ると、高齢の方も出玉感をみて追随して活気を作る、そういう特殊な空間でした。シオサイの兄弟機である『ハナハナ』シリーズも、全国展開を意識して試行錯誤しながら開発し、結果、好評を得ました。加えて2001年はAタイプ固定島化の流れに乗るなど、時代背景もうまく合致したことも市場拡大に大きく影響しましたね。

誰でもすぐに馴染める単純明快さ、それが逆に興奮できるのが『シオサイ』と『ハナハナ』です。市場でみる度、これはいけるんじゃないか、と我々も手ごたえを感じていました。

──今日の機種開発にも通じるところがあるんでしょうか。

そうですね。一貫しているコンセプトがあります。それは「中身は複雑でもシンプルに楽しんでもらえる(見える)遊技機であること」です。

6号機になって、ゲーム性の幅が広がり、様々なチャレンジができるようになりました。AT機である『スーパーハナハナ』もそれです。もちろん元々のAタイプ(告知機)のような単純明快さであることを心がけています。仕組みがどんなに複雑でも、プレイヤーにはシンプルに感じるように、老若男女誰でも打てるようにしなければ絶対ダメだと、日々追求しながら作っていますね。

もちろん、単純明快さという意味では演出面。「ハイビスカス」にもこだわり続けます。シンプルなだけに、その存在価値が希薄になってしまわないよう、商標化するなど丁寧にブランディングしています。

──最後に、業界に対する想いをお聞かせください。
本格的な6号機市場がスタートし、コロナ禍の長期化でまだまだ厳しい市場が続いています。そんな中でも、弊社がメーカーとしてできることは開発努力を絶やさないことだと考えます。

この50年間、業界に育ててもらいました。我々は、万人に愛され親しまれる機械を世に送り出すことで、業界を盛り上げられるよう、前のめりでチャレンジしていきます。

のぐち・ひろし
販売会社での営業担当を経て、2005年同社営業本部配属。その後マーケティング部門を経て、現在は機種プロモーションや採用ブランディングを行う傍ら知的財産管理などを担当。事業推進部/総務部責任者も兼務。1975年(昭和50年)生まれの47歳。兵庫県淡路島出身。

転機となったハイビスカスランプの告知演出

今年5月に50周年を迎えるパチスロメーカーのパイオニア。特徴的なハイビスカスランプを用いた告知演出は、すでにパチスロの一ジャンルとしての地位を確立している。これまでの軌跡を辿った。

同社が大阪西区の船場に設立された1972年は、貸玉料金が2円から3円に値上げされた年で、市場にはパチスロ機の原型となる「オリンピアマシン」(0号機)が登場していた。

当時の同社は、喫茶店にテーブルゲームや麻雀ゲームなどを販売する事業が主軸。アップライト式のスロットマシンも販売していたが、そこで新たな可能性に挑戦するため、高砂電器産業(当時)とタッグを組んだのが、業界と本格的に携わることになったきっかけだ。

1980年には、日電協が発足。その後、保通協制度の導入など、事実上の1号機時代がスタートした1985年に産声を上げたのが、同社の初号機『フォーチュンワン』だ。

その後同社は、1、2年に1機種のペースで新機種を市場投入。本格的な4号機時代に突入していた1994年には、同社独自のリーチ目を採用した『シティボーイ-30』シリーズ4タイトルを発表。なお、「-30」という表記が使用されたのは、この『シティボーイ-30』が初めて。

そして1997年11月にリリースされたのが、ハイビスカスランプを告知演出に初採用したヒットタイトル『シオサイ-30』だ。

その頃業界は、社会的不適合機問題により大規模撤去を余儀なくされていた。すべからく遊技機需要が高まり、同機の販売に追い風が吹く。

それまでの同社製パチスロ機は、独自のリーチ目「パイオニア目」を開発するなど、出目にこだわった設計思想があった。しかし、同機のヒットを機に、出目だけでなく、シンプルな完全告知演出を魅力としたメーカーとしての印象が次第に色濃くなっていく。

『ハナハナ-30』が大ヒット ハイビスカス定着に寄与

その傾向は、2001年に発売された『ハナハナ-30』の大ヒットによって加速。同社パチスロ機の持つイメージを決定づけた。同機は、これまでに20作ほどリリースされ、累計で30万台弱の導入を果たす大ヒットシリーズとなっている。と同時に、ハイビスカスランプを用いた告知演出は、同社お馴染みのゲーム性として幅広く周知されていくことになる。

5号機時代に突入した後も、シンプルな完全告知機を続々とリリース。とりわけ30φ市場が活発な地域においては、営業に不可欠なタイトルとして確固たる存在感を示す。

今や、同社パチスロ機の代名詞ともいえるハイビスカスランプを用いた告知演出機能だが、それに対する思いの強さは、2020年に「ハイビスカスの商標登録及び今後のハイビスカスモチーフ機について」(※囲み記事参照)と題して、広く業界にハイビスカスブランドの尊重が呼びかけられたことからもうかがい知ることができる。

ハイビスカスブランドの尊重呼びかけ

パイオニアは保有する一連の「ハイビスカス商標」の商標権に基づき、第三者がパチスロ及びパチンコ機で「形状が近似するものを含めて」類似する商標の使用を控え、ハイビスカスブランドを尊重するよう呼びかけた。
同社では2020年8月に取得しているハイビスカス商標(図形・位置)に関わるプレスリリースを発表。翌年5月にも前回リリースに追加分の商標となる第二弾のプレスリリースを発表している。
商標の種類は、ハイビスカスの形状に絡む「図形商標」やコーナーランプなどへの配置場所に絡む「位置商標」など複数あるが、下記掲載例(リリース抜粋)を含めて、同社では「ハイビスカス商標」と呼称する。

今年1月には、同社初となるテレビCMを放映。その事が訴求されている。同社幹部は、「根底にあるのは、ハイビスカスの価値や、それによってイメージできるゲーム性を守りたいという考え。ハイビスカス自体は、自然の産物なので、使いやすいイメージはあると思うが、我々はこれからもハイビスカスとともに事業を推進していきたいという思いを強く持っているので、少しでもその考えを理解して頂ければという気持ち。今のところ、ありがたいことに理解が拡がっている」という。

今年5月に50周年を迎える同社。今後もハイビスカスのブランディング戦略を推し進めながら、6号機時代を乗り切っていく構えだ。

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