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パチンコ業界ニュース

【調査報道】パチンコ業界、活発化する政治的活動/中台正明 遊技日本2019年6月20日

●中台レポート②
今年の業界団体・組合の総会シーズンも幕を閉じつつあるが、多くの会場で参加者が話題にしたのが政界との太いパイプづくりに向けて大きく舵を切った業界の決断だった。

業界の有志が、おだち源幸氏を支援する「おだち源幸遊技産業後援会」、及び広く政治活動をしていく「全日本遊技産業政治連盟」を、今年の春前に設立したことは本レポート第1弾「パチンコ業界、対政界戦略で大きな決断」(4月5日掲載)で伝えたが、その2つの組織がおだち氏支援を業界の関係者に呼びかける活動をゴールデンウイーク明けから活発化させている。

一方、政局に目を向けると、次期の参議院選挙が7月4日公示、21日の投開票で行われるとの見方が強まっている。そこで業界の政治的な活動の“今”を追いつつ、その政界戦略をあらためて考えてみたい。

●おだち氏を励ます集いに700人超、特設サイトも開設
おだち源幸遊技産業後援会(阿部恭久会長)と、全日本遊技産業政治連盟(伊坂重憲会長)が本格的に活動を開始したのは5月17日。都内港区の第一ホテル東京でおだち氏の記者会見と「前参議院議員 おだち源幸君を励ます集い」を開催し、励ます集いには700名を超す業界関係者が訪れた。

以後、おだち氏は業界団体や都府県方面遊協の総会の会場に足を運ぶなど、精力的に業界行脚を続けている。

加えて、6月7日には後援会が特設サイトを開設。「大衆娯楽である遊技産業を守ります」とトップに掲げた同サイトでは、おだち氏の業界の挨拶、阿部会長の応援メッセージVTRのほか、「遊技産業の貢献を発信します」「遊技産業の復興を推進します」「努力が報われる産業政策に取り組みます」「地域に根付いた大衆娯楽を守ります」「働く人たちに夢と希望を広げます」という五つの約束が掲載されている。同10日には本人によるツイートの発信も開始した。

ちなみに、おだち氏には同サイトとは別にオフィシャルサイトがすでにあり、そちらに設けられている「税理士の先生方へ」「公認会計士の先生方へ」などの支援業界へのメッセージページ一覧にパチンコ業界の名前はない。

この点について、ある主要団体の関係者は「他業界へのメッセージページと並べられては、遊技業界が印象に残らない。それで特設サイトをつくってもらった」と説明する。「いずれは既存のオフィシャルサイトにも遊技業界向けのページが設けられると思う」と話している。

また、後援会ではサイト開設の動きと並行して、おだち氏、阿部会長、自民党の二階俊博幹事長3氏のメッセージ映像を収録したDVD、ポスター、リーフレットなどをセットで全国の遊技関連企業に送付した。

ポスターやリーフレットは3月にも一部方面に送っていたが、5月17日の本格始動に伴い、あらためて手配したものだ。

西日本の有力ホール企業の経営者は「支援の狙いについて社員に理解を求めた上で、ポスターは本社と店舗の事務所に張っている。後援会には社員の半数以上が入ってくれたようだ」と言う。

●業界の力を政権与党に知らしめる絶好のチャンス
もっとも、おだち氏は2回、落選の経験がある。しかも今までは大阪地方区で、全国的な知名度も高くない。だが、同氏の支援を業界に要請してきたのは自民党の二階幹事長だったことに某主要団体の幹部は触れ、「業界の力を政権与党に知らしめる絶好のチャンス」と前向きに受け止める。

その背景には、市場規模の縮小が続く現状に歯止めをかけるべく、現在の警察庁との関係に一石を投じたいという強い思いがある。

某ホール団体の幹部は「7~8年ほど前から少しずつ行政と業界の関係が一方通行になってきたように思う。特に2014年に国会で業界の依存問題が取り上げられてからは、過度なのめり込み防止の名のもとにさまざまな指導が行われるようになり、ついには依存の抑止効果に関する科学的な根拠が何もないのに、遊技機の出玉性能が3分の2に抑えられた。行政との一方通行の関係性を早急に変える必要があり、そのためには政治の力が不可欠だと考えた」と吐露する。

政権の与党がどれだけ業界と警察庁との潤滑剤となりうるかは、前回のレポートで触れた通りだ。

4月19日に閣議決定された「ギャンブル等依存症対策推進基本計画」において、計画案では「ATM等の撤去を推進」となっていたのが「撤去等の推進」に修正された。

このことについても、自民党の国会議員の有志で組織する「時代に適した風営法を求める議員連盟」(以下、風営法議連)が3~4月に計4回にわたって行った遊技機基準等プロジェクトチームの会合で問題視したためだとする見方がある。

●政治の力で実現した業界と警察庁の連絡会
こうしたなか、当面のあいだ注視すべき動きは6月24日に行われる主要6団体(全日遊連、日遊協、日工組、日電協、全商協、回胴遊商)と警察庁の第1回連絡会となる。

これも政治の力のバックアップがあって実現したものだ。風営法議連では4月25日付で国家公安委員長に提出した「遊技機基準等に関する提言」において、警察は型式試験における適合率の向上に向けて取り組むとともに、ゲーム性、エンターテインメント性の向上した遊技機の開発が可能な環境の整備に一層、務めるべきだとした上で、警察庁と業界における協議の場を定期的に設けるよう求めていた。

それを受けて、21世紀会が警察庁と折衝していたもので、今回は主要6団体から各1名が出席する予定になっている。これまで、業界では日遊協が年2回、会長・副会長らによる同庁との連絡会を行うなどしてきたが、21世紀会と同庁の連絡会は初となる。

第1回目の連絡会のメインテーマは、6号機の市場への供給問題になると見られている。今年の秋から年末にかけて大量の旧基準機が撤去の期限を迎えるにも関わらず、6号機は適合率が低い状況が続いている。

そのため、風営法議連の遊技機基準等PTでは、型式試験の方法や保通協の情報開示のあり方を問題視していた。しかし、5月の適合率は24.1%と低いままだ。はたして、どんな議論が展開されるのか。「保通協による情報の開示が進めば、適合率は間違いなく変わっていく」と元メーカー関係者は期待を寄せる。

業界が政界との関係性を強めることで、逆に行政との関係に悪い影響を及ぼすのではないかと懸念する業界関係者もいる。

しかし、それは今後の政治的な活動のやり方次第だともいえる。いずれにせよ、賽は投げられた。参議院選挙は刻々と迫っている。限られた時間の中で、今回の政治的な決断の狙いとメリットをどれだけ業界内に浸透させられるかに注目したい。

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