パチスロ機 無断交換を準備 警察庁指導で中止
Sankei web2003年7月23日
パチスロ機メーカー(本社・東京)が今月十六日、プログラム異常の見つかった最新機種の部品を、都府県の公安委員会の許可がないまま交換しようとしていたことが二十一日、分かった。勝手にパチスロ機の性能を改変する行為は風営法違反(無承認構造変更)に当たる。通報を受けた警察庁やホール経営者の業界団体「全日本遊技事業協同組合連合会」(全日遊連)が十六日夜、メーカー側に中止を求め、交換は未然に中止されていた。
問題の機種は六月下旬から約三万台が全国に販売されたが、今月に入って、客が特定の打ち方をすると大当たりしやすくなってしまう「攻略法」の情報がネット上などで流布。メーカー側が調べたところ、台に組み込まれた「サブ基盤」と呼ばれるコンピューター基盤のプログラム異常が原因と分かったという。
メーカー側は出荷を停止するとともに、改良したプログラム基盤を急ピッチで製造していた。
パチンコ、パチスロ機に不具合が見つかった場合、通常は改良した新機種の型式認定を取得し直して、販売の許可を受けなければならないが、許可までには早くて数週間かかるという。
全日遊連の山田茂則理事長によると、十六日夕、東京や九州など十数都府県の組合から、「メーカーが『今夜、サブ基盤の交換にうかがいたい』と各地の店に要請してきている」との連絡が相次いだ。
全日遊連はただちに警察庁に連絡。同庁から、「交換したら店側も処罰される可能性がある」と指導されたため、交換に応じないよう店に徹底させるため、全国の組合への連絡に追われたという。
同時に山田理事長はメーカー役員に電話し、「違反になる部品交換をするなら中止してほしい」と要請した。同日夜、役員から返答の電話があり、「交換しないよう手配した」と知らされたという。警察庁も同夜、メーカー側に交換を中止するよう指導していた。
埼玉県内のパチンコ店経営会社は取材に対し、「メーカーの営業マンから十六日、『サブ基盤を交換させていただく方向です』と言われた」と証言。「メーカーの埼玉営業所にはその日、社員百人前後が集められ、深夜に県内のホールを分担して回って部品交換するため、営業マンがレンタカーの手配などをしていた」と話した。
問題のパチスロ機は、六月初旬に警察庁の外郭団体による型式認定を受け、同月下旬から今月にかけて、全国のホールで旧機種との入れ替えが進められていた。
山田理事長は「メーカー側に『違法な交換ならやめてほしい』と迫ったら『やめます』と言ってきたのだから、向こうに違法性の認識があったということだ。違反ならまず逮捕されるのはホールの人間で、大変迷惑な話だ」と憤慨している。
メーカー側幹部の話 「十六日夜に警察庁の担当者から電話で指導を受け、電話して交換をやめさせた。(社内の)どこで交換を準備したのか自分は分からない。念のため二日後に、改良基盤の枚数をチェックしたところ、減っておらず、交換はすべてされなかったと確認した」
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■「攻略法」流布で店側混乱
問題のパチスロ機を設置している各地のホールでは、夏の繁忙期を前にプログラム異常による「攻略法」情報が流布し混乱が広がっている。
メーカー関係者によると、客がこの機種のストップボタンを通常と異なる順序で押し続けると、大当たりしやすくなり、「朝から一日中この打ち方を続けられたら、一枚二十円のメダルが二千枚くらい余計に抜かれてしまうようだ」という。
東京のある店は、十六日に攻略法があるとの情報をキャッチ。その前から異常とも思えるメダルの出方をしており、翌日からこの機種に「(ボタンの)変則押しは禁止。違反した場合はコインを没収します」との張り紙をして、店員に監視させている。店側は「損害は店がかぶるしかない」とぼやく。
同じ張り紙をした埼玉県内の店では、変則押しをして店員に注意された客が暴れ、トラブルになったという。張り紙や監視の物々しさを敬遠してか、連休中にもかかわらず、同機種だけ空席が目立つ店も。
問題機種のコーナーだけ電源を切っている店も多い。埼玉県内の別の店では、「収入減だし、店のイメージが落ちるが、仕方がない」と話す。
≪無承認構造変更≫
すべてのパチンコ、パチスロ機は、射幸性を一定に保てるよう、警察庁の外郭団体「保安電子通信技術協会」(保通協)の型式試験を受ける。これにパスした上で、都道府県公安委の検定を受けなければ、販売できない。検定後に改変を加える場合も公安委の承認などが必要。無承認で性能変更した台を営業に使うと、刑事罰の対象となる。これまでの無承認構造変更の摘発例は、店側といわゆる「ゴト師」が組んで台に細工する「裏ロム」事件のケースが大半だった。