TOP INTERVIEW
サンセイアールアンドディ
山本和弘
代表取締役社長

サンセイの“いま”について山本社長に聞く連載の2回目は、この2年の間にサンセイアールアンドディにどんな変革が起きたのかがテーマ。ホールとともに「稼働を作る」企業を目指す取り組みを聞いた。(文中敬称略)

──今回はサンセイアールアンドディという会社そのものについてお聞きします。早速ですが、山本さんが社長に就任してから2年、この間にサンセイに何が起きているのでしょうか。
山本 サンセイはこれまで、個性的な機械を作る会社として見られてきたと思います。『牙狼』という強いブランドもあり、他社にはない発想で挑戦してきた歴史もあります。ですが、今の市場では、それだけでは足りません。良い機械を作る。それをホール様に届ける。導入後にどう育てるか、ユーザーにどう伝えるかを一緒に考える。そして次の機械への期待につなげる。この一連の流れのすべてにメーカーが責任を持つ時代になっています。この2年でサンセイは「機械を売る会社」から、「ホール様と共に稼働を作る会社」へ変わろうとしているのです。

──いまホール企業が直面している課題をどのように見ていますか。
山本 新台価格は上がっている。人材が集まらない。ユーザーの動きが早い。新台導入後の稼働が読みづらい。競合店と差別化をしなければならない。一方で、利益も確保しなければならない。こうした状況の中で、ホール様にとって機械を選ぶという判断は以前よりもずっと重くなっています。だから私たちメーカーも考え方を変えなければなりません。「この機械は良いですよ」だけでは足りない。「この機械をどう使えばホール様の営業に役立つのか」まで一緒に考える必要があります。サンセイは、こうしたホール様の課題を自分たちの課題として受け止める会社になりたいと思っています。

──サンセイは業界の大手メーカーと比べると規模の面では大きくありません。逆に、その規模だからこその強みはありますか。
山本 むしろそこを強みにしなければいけません。サンセイは、営業、開発、商品企画、販促、調達、製造、デジタルの各部署が近い距離で話せる会社です。人数が多すぎないからこそ現場の声が届きやすい。意思決定も早くできる。課題が見えた時にすぐに動ける。もちろん、規模が小さい分、一人ひとりの役割は重くなります。でも私は、それがサンセイの可能性だと思っています。全員が「この機械を市場で育てるために、自分は何ができるか」と考える会社になれば、大きな会社とは違う戦い方ができます。『牙狼12』の稼働支援の取り組みがまさにそうです。営業、開発、販促だけでやるのではなく、会社全体で一つの機械を支えていく。これが今のサンセイの方向性です。

この2年で変えたのは販売後の動き方

──具体的には、この2年でどのような動き方に変わりましたか?
山本 大きく変えようとしているのは、機械を販売して終わりにしないという姿勢です。以前から、営業担当者は導入後もホール様と向き合ってきました。ただ、これからはそれを個人の努力だけに任せるのではなく、会社として仕組みにしていかなければなりません。たとえば『牙狼12』では、導入後にどう見せるか、どう推していただくか、どうユーザーに伝えるかを考えています。オススメ機種化、販促素材、動画、SNS、業界メディア、グッズ、会員カード、来店企画。これらは一つひとつを見ると販促施策ですが、目的は同じです。ホール様が「この機械を大切に使っている」とお客様に伝えられる状態を作ることです。

今は新台を入れただけで自然にお客様が集まる時代ではありません。ホール様自身がどう発信するか、どのように島を作るか、どのようにユーザーへ期待感を届けるかが、稼働に大きく影響します。だからサンセイは、メーカーからユーザーへ一方的に伝えるだけではなく、ホール様が主体となって発信できる材料を用意する会社になりたいのです。これはサンセイにとって大きな変化です。機械のスペックや演出を説明するだけではなく、導入後までホール様と一緒に考える。ホール様の商圏、競合店、客層、既存機種の構成、過去の実績を見ながら、「この店ではどう育てるべきか」を考える。そういう動き方を営業だけでなく、販促、開発、デジタル、製造、調達まで含めて、日々社員にはしてもらっています。

──ホールが「推せる理由」を作ることが重要になる?
山本 その通りです。ホール様が本当に必要としているのは、良い機械であることに加えて、「なぜこの店でこの機械を推すのか」をお客様に説明できる理由だと思います。機械の性能が良い、版権が強い、演出が良い。もちろんそれらも大事です。しかし、それだけでは競合店との差別化にはなりにくい。たとえば同じ『牙狼12』でも、入口に近い主力島に置くのか、出玉結果をどう見せるのか、店内POPやSNSでどのように伝えるのか。地域の競合店と比べてどのくらい本気で扱っているのかによって、お客様の受け止め方は変わります。ホール様が「うちは牙狼に力を入れている」と伝えられる状態を作ることが、稼働を作る第一歩になります。

サンセイが用意するべきものは、単なる販促物ではありません。ホール様が使いやすい言葉、店内で伝わる素材、SNSで発信しやすい話題、メディアや動画で広がる情報、そして導入後の振り返りです。さらに、どの商圏で、どの台数で、どの競合機種と戦うのかという提案も必要です。私は、これからのサンセイのブランドは「相談できるメーカー」という印象から作られなければならないと思っています。機械を買う前だけではなく、買った後も相談できる。稼働が伸びた時は一緒に次の打ち手を考える。伸び悩んだ時は原因を見つけに行く。次の新しい機械につながるように、ホール様と一緒に市場を作っていく。そういう姿勢を、全てのホール様に伝えていきたいです。


ものづくりを「市場起点」に組み直す

──この2間年で取り組んできた”ものづくりの仕組み“の変化で、サンセイのどこが変わったとホールに伝えたいですか?
山本 一番伝えたいのは、ものづくりを市場起点で組み直していることです。以前は良い版権で良いスペックと良い演出を作ることが中心でした。もちろん、それは今も重要です。ただ、今はそれだけでは足りません。ホール様がどう扱えるのか、ユーザーがどこで期待するのか、導入後にどう育つのか。そこまで見て商品を考える必要があります。この2年で、サンセイは「作ってから売る」だけではなく、「市場の声を聞きながら作り、導入後の育て方まで考える」方向へ動いています。営業が持つホール様の声、商品企画が見る市場の変化、開発が持つ技術的な可能性、販促が考える伝え方を、もっと早い段階からつなげる。そこが変化の中心です。

──具体的な取り組みを教えてください。
山本 たとえば、スペックです。市場では、重い確率帯や複雑なゲームフローに対する疲れも見えています。そうした中で、ユーザーが「これなら打てそうだ」と感じる入口、ホール様が「これなら説明しやすい」と感じる設計が重要になります。単に射幸性を高めるだけではなく、当たりまでの距離感、初回体験、RUSHまでの納得感、時間効率、説明のしやすさまで含めて考える必要があります。開発と営業の擦り合わせも大切です。市場の状況、ホール様の導入判断、競合機種の動き、ユーザーの反応を開発側が理解し、開発中の商品に反映する。逆に、開発側が持っている新しい仕組みや表現の可能性を営業が理解し、ホール様へ分かりやすく伝える。この往復がなければ、機械は市場で強くなりません。


──遊技機市場では、LT、デカヘソ、設定機能などの新しい仕組みが増える一方で、ユーザーに対しては分かりやすさや納得感が求められています。どういう考えで挑んでいきますか。
山本 ものづくりを「開発の中だけで完結させない」という考え方です。以前は企画を立て、スペックを決め、演出を作り、役物を作り、試打して直すという流れが中心でした。もちろん、それ自体は今も大切です。ただ、今の時代はそれだけでは足りません。市場で何が起きているのか。ホール様はどのような機械を扱いやすいと感じているのか。ユーザーはどの瞬間に期待し、どの瞬間に離れてしまうのか。新しい仕組みを入れた時に、分かりやすさや品質にどんな影響が出るのか。そうしたことを開発の後半で確認するのではなく、もっと早い段階から商品づくりに入れていく必要があります。ここが、この2年で大きく変えようとしているところです。

もう一つは、挑戦の仕方です。サンセイは昔から、他社と違うことに挑戦してきた会社です。そこは絶対に失いたくありません。ただし、これからは「面白そうだからやる」だけではなく、「商品として成立するところまで磨き切る」ことが重要になります。新しいスペックを考える。新しい役物やユニットを検討する。新しい演出表現を入れる。新しい版権や、版権に頼らない企画にも挑戦する。それぞれ大事な取り組みですが、個別の企画で終わってしまうと会社の力になりません。うまくいった理由、うまくいかなかった理由、ホール様が評価した点、ユーザーが反応した点、開発中に苦労した点。それを次の商品に残していくことが必要です。私は、この循環をもっと強くしたいと思っています。単発のヒットや個別のチャレンジではなく、会社として再現性のあるものづくりに変えていきたいのです。

一つの機械で得た学びを、次の機械に残せる会社にしたい。試打で出た意見も、単なる感想で終わらせない。不具合も、担当者の反省で終わらせない。営業現場の反応を、その場限りの情報で終わらせない。申請や量産で見えた課題も、次に同じことを繰り返さないための材料にする。そういう積み重ねが、会社の開発力になります。パチンコは、感覚だけでは作れません。でも、数字やルールだけでも面白くなりません。ユーザーが熱くなる感覚と、ホール様が扱いやすい現実と、開発として成立させる技術。その3つをつなげる必要があります。この2年で、サンセイはそこに向き合い始めています。

私は、サンセイを「一度きりのアイデアで勝つ会社」ではなく、「挑戦を積み重ねて強くなる会社」にしたいと思っています。『牙狼』のように市場の空気を変える機械も必要です。新しい遊び方に挑む機械も必要です。若いユーザーに届くコンテンツも必要です。ホール様が安心して導入できる品質も必要です。そのすべてを、別々の取り組みではなく、会社のものづくりとしてつなげていく。これが、ここ2年でサンセイが変わろうとしていることです。

ホール様には、サンセイを単に「変わったことをするメーカー」と見るのではなく、「変わったことを、きちんと商品にしてくるメーカー」「次の提案に学びを残してくるメーカー」。そう感じていただける会社にしていきたいと思っています。

パチスロ参入は次の柱をつくる挑戦

──最後に、この2年でサンセイが変わったことの一つとして、なぜパチスロへの取り組みを始めたのかについて聞かせてください。
山本 まず前提として、今の遊技機市場は大きく変わっています。ホール様の中で、パチスロの存在感は以前よりも明らかに大きくなっています。スマスロ以降、若いユーザーや、パチンコとパチスロの両方を遊技するユーザーの動きも変わりました。ホール様の営業を見ても、パチスロが集客や粗利の面で大きな役割を持つ場面が増えています。

そうした中で、サンセイがパチンコだけを見ていてよいのか。私は、そうではないと思っています。サンセイはパチンコメーカーとして歩んできた会社です。パチンコで市場の空気を変えてきた経験もあります。そこは絶対に大事にします。ただ、これから会社としてさらに成長していくためには、ホール様の営業全体を見なければなりません。ホール様にとって、パチンコもパチスロも同じ店舗の中でお客様を呼び、楽しませ、利益をつくる大切な商品です。ですから、パチスロに取り組むということは、単に新しいジャンルの商品を出すという意味ではないのです。ホール様の営業課題に対して、サンセイがより広い範囲で応えられる会社になるということです。

──パチスロは開発思想も、ユーザーの見方も、ホール様の使われ方も、パチンコとは違う部分があります。サンセイとしては、どのような姿勢で取り組んでいきますか。
山本 おっしゃる通り、パチスロはパチンコとは違います。スペックの作り方、出玉設計、抽選、制御、設定、ホール様での運用、ユーザーの期待感。どれもパチンコとは異なる知見が必要です。だからこそ、簡単に考えてはいけません。「サンセイがパチスロも出します」というだけでは、ホール様にもユーザーにも響かないと思っています。大事なのは、サンセイがパチスロで何を実現したいのか。私は、パチスロでもサンセイらしい驚きや熱量を作りたいと思っています。ただし、それは単に派手にするという意味ではありません。パチスロの文脈の中で、ユーザーが期待できるポイントを作る。ホール様が扱いやすい商品にする。長く見てもらえる設計にする。そこまで含めて、初めて商品になります。そのためには、社内の体制づくりも重要です。パチスロの肝になる出玉、抽選、制御の部分をどう理解し、どう社内にノウハウとして蓄積していくか。外部の力を借りる部分はありながらも、最終的にはサンセイが主導して商品を判断できる状態にしていかなければいけません。

──パチスロに取り組む理由は、会社のものづくりを強くする意味もあるのでしょうか。
山本 もちろんあります。サンセイのものづくりを広げるだけではなく、深めることにもつながります。パチンコにはパチンコの面白さがある一方で、パチスロにはパチスロ特有の面白さがあります。設定を読む楽しさ、出玉の波、ゲーム性の積み重ね、ホール様の営業との連動、イベントや期待感の作り方。そうしたものを学ぶことは、パチスロ開発だけでなく、パチンコ開発にも必ず返ってくると思っています。

たとえば、ユーザーが何に期待して席に座るのか。どういう情報があると打ちたくなるのか。どのタイミングで熱くなるのか。どこで納得し、どこで離れてしまうのか。これはパチンコでもパチスロでも共通する本質的なテーマです。サンセイがパチスロに取り組むことで、遊技機メーカーとしての視野を広げ、ユーザー理解を深め、ホール様への提案力を高めることができる。そこに大きな意味があると思っています。

──ホールに対しては、パチスロ参入をどのように伝えていきたいですか。
山本 サンセイが本気で次の柱を作ろうとしていることを感じていただきたいですね。もちろん、最初から簡単に結果が出るとは思っていません。パチスロには強いメーカーも多く、ユーザーの目も厳しい。ホール様も、実績のないメーカーのパチスロに対して慎重になるのは当然です。だからこそ、私たちは一つひとつ積み上げていきます。市場を見て、ホール様の声を聞き、パチスロに必要な技術や知見を学び、社内に蓄積していく。うまくいったことも、うまくいかなかったことも次に残す。そうやって、サンセイのパチスロを育てていきたいですね。

私は、パチスロへの参入を「パチンコ以外にも商品を増やす」という話だけで終わらせたくありません。サンセイがホール様の営業全体を支える会社になるための挑戦だと考えています。そして、パチンコで培ってきた熱量と、パチスロで学ぶ新しいゲーム性。その両方を持つことで、サンセイはもっと強くなれると思っています。

やまもと・かずひろ
1974年、鳥取県生まれ。2002年4月、株式会社サンセイアールアンドディに入社し、営業本部東京支店に配属。ホール様への営業に従事し、現場のニーズを深く理解する経験を積む。その後、営業本部において販促企画および販売戦略の立案に携わり、事業の発展に貢献。さらに開発製造本部へ異動し、初代「牙狼」の開発を担当するなど、商品開発分野においても実績を重ねる。以降、専務取締役、代表取締役副社長を歴任し、2024年4月、代表取締役社長に就任し、現在に至る。