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パチンコ業界ニュース

【対談インタビュー】業界の情報分野のトップランナーが目指す次の一手 ダイコク電機 代表取締役社長 栢森雅勝氏(後編) 遊技通信2023年9月25日

遊技業界の情報サービス分野を牽引するダイコク電機。スマート遊技機の普及が好材料となって、2023年3月期決算、2024年3月期第1四半期決算ではいずれも増収増益となった。業界市場が縮小傾向にある中で、今後のホール経営をどう支援していくのか。同社の取組みと今後の展望について、ダイコク電機 代表取締役社長の栢森雅勝氏に聞いた(聞き手:遊技通信社 代表取締役 伊藤實啓、文中敬称略)。

ファン向け情報サービスの拡充でホール集客を支援
企業の“カタチ”を変える社内改革を積極的に
推進

伊藤 前編では主にホール向け事業に関する内容をお聞きしました。後編では御社のファン向けサービスや社内改革の取組みについてうかがいますが、その前に、御社の決算資料などをみて個人的に面白いと思ったのは、業界の市場規模を示す際に貸玉料金の総額でなく、粗利規模を取り上げられているところです。まずはその意図についてお聞かせください。

栢森 かつて業界は30兆円産業といわれていた時代もありましたが、業界の市場規模というと貸玉料金でみるのが通例でした。昔からそこは違うのかなという思いがあって、発刊20年目を迎えた当社の「DK-SIS白書」でも、最初から市場規模は粗利規模でまとめてきました。その辺りについては当社の業界向けセミナーなどでも説明していますが、業界に残って回っているのは営業利益です。そこからホール様は機械代や人件費、設備費に充てられているわけですが、その部分も業界内で回っているお金になるので、業界でいう市場規模といえば、間違いなく営業利益になると考えています。

伊藤 情報サービス分野のトップ企業として、やはり実質的なところを見ていられるんだなとつくづく感じます。

栢森 貸玉料金の総額が業界内ですべて回っているわけではありません。その昔、業界でヘビーユーザー化が進んでいると言われていた頃、これだけの産業規模をこれだけ少なくなったファンが支えているんだという話をよく聞きましたが、ファン1人あたりの投資金額が急に増えるわけがありません。当然ですが、ファンが遊技して勝った負けたの繰り返しがあるので、貸玉料金の総額がそのまま年間でいくら使われたから市場規模という話にはなりません。

伊藤 おっしゃる通りで、この辺りは業界から外へ向けて説明する必要があると常々思っています。

栢森 世の中の景気をみる上で物価指数や初任給の推移などいろいろありますが、それほど急に上がりません。外食産業でもお客様の胃袋の数以上に食べられているわけではなく、それなりの人数分の胃袋を奪い合っているのが実状です。そうした意味合いからもパチンコ業界は、ゲームなど様々な娯楽産業の中でお客様の余暇時間を奪い合っているわけですから、その中で産業規模をみる場合はやはり営業利益でみるのが妥当だと思います。

伊藤 御社のファン向け情報サービスについてお聞きします。今後の展開についてはどのように考えていますか。

栢森 人やモノが動くときには必ず情報があります。例えば昔のマーケティング理論も、情報のコントロールによって自分たちの商品を市場で有利に動かそうとする理論でした。そもそもデータランプも大当り情報を出すことでファンの疑心暗鬼や不安を解消することを目的にしていて、「データロボ」もこの台を打とうという動機になる情報の提供が狙いでした。情報はファンの楽しみを増加させます。この台を打ちたい、この台のこれを知りたい、楽しそうといった部分は店舗の中でも外でもファン心理は同じですが、情報を外で受け取る場合はファンを店舗に呼び寄せることができる集客力へと意味合いが変わります。ファン向け情報サービスの今後の展開については、情報を外でみているファンを店舗にどう呼び寄せるかをポイントにしているので、そのためのコンテンツ充実に重点を置いて取り組んでいく予定です。

伊藤 情報を集客力に変えることがファン向け情報サービスの方向性ですね。

栢森 加えて非常に重要なのが情報の取扱いですが、外で得られる情報を再利用できないようにする、いわゆるスクレイピング対策を強化しなければと考えています。インターネットなどから様々な情報を集めて加工し、二次流通させている人たちが今現在も見受けられますが、当社のファン向け情報サービスが二次流通された場合、ホール様が望まないかたちでの情報提供になってしまいます。それに情報を集客に活用するという当社の狙いとも違ってくるので、データの見た目はともかく、スクレイピングされないように様々な対策をとっているところです。

伊藤 スクレイピングの被害はどれぐらい前からあるのでしょうか。

栢森 結構前からあると思います。今インターネットで“パチンコデータ”と検索すると、当社をはじめ様々な公式サービスが出てきますが、それ以外にもたくさんの検索結果が出てきます。どこまで信憑性があるか分かりませんが、スクレイピングしたデータを加工して、競馬新聞のようなかたちで設定情報を提供しているようなものも見受けられます。それがどんどん拡大していっている状況なので、早急に対策しなければなりません。

伊藤 批判的に聞こえたら恐縮ですが、ファン向けのデータ公開が行き過ぎたがゆえに、負の側面も出てきているような感じもします。その点についてはいかがでしょうか。

栢森 そうした見方は昔からあると思います。「データロボ」を出した当初も、例えば稼動が低い店舗の不人気な機種は、大当り回数でゼロが並びますから、情報を出したところでファンは打つ気にはなれません。そこでランキング上位機種や注目機種の情報をピックアップしたりしてなるべく動きのある情報をみせるようなかたちにしていました。

伊藤 店舗が持つ情報と顧客が持つ情報を考えた場合、一般的な業界では顧客が持っていない情報を店舗側が持っているという非対称性がウリになりますが、パチンコ業界は逆になっている印象があります。個人的な感想ですが、パチンコ業界ではファンが豊富な情報を持っていて、店舗側はどこまで情報を出せばいいのか判断しづらいために全部情報を出してしまっている感じがします。

栢森 やはり店舗の視点は、まずその機種にファンが付いているかどうかが第一義で、付いていない機種は撤去・移動して手当てが必要という見方になります。逆にファン側にすると、その遊技機がどんな動きをすれば良い兆候なのかといった部分にも詳しくなっているので、店舗側がその辺りも踏まえながら対応していくのはなかなか難しいと思います。

伊藤 そうした中でも集客につながるような情報の出し方や質を考えて、今の状況を変えていく必要があると思います。最近では強い店舗グループの中でも二極化が進んでいて、結局のところお客様を呼べる台をたくさん入れている店舗が勝つという道筋しかみえなくなっているので、業界はこのままでいいのかなという感じがします。

栢森 業界も同じく、今はあらゆるところでメガヒットしたものだけがとんでもなく動いている状況なので、なんとも残酷な時代だなと思っています。

伊藤 ウィナー・テイク・オールの状況に資本主義が行き着くのは仕方がないことかもしれません。遊技機メーカーにしても、事業継続するには一握りのヒット機種に頼らざるをえないような事情がありますから、2〜3台分の遊技機コストをかけてヒット機種を入れている状況も見受けられますが、こうしたところも状況を悪化させているような気がしてなりません。

栢森 例えば映画館のビジネスモデルはどれだけお客様が入ろうが配給先も映画館も収益は同じです。業界でもメーカーと店舗が売上や利益を共有できるようなビジネスモデルができれば、少しは変わってくるかもしれません。

伊藤 共有モデルとしては、業界にも遊技機レンタルがありますが、残念ながら映画館のようなビジネスモデルになっていません。利益とリスクを共有するモデルでいえば、アメリカなどのカジノマシンがそれにあたりますね。

栢森 今後の業界を考えると、これは難しいことだと思いますが、売った機種の稼動が長ければ長いほど遊技機メーカーも潤うといった仕組みが必要になってくるのではないかと個人的には思っています。

 

企業の“カタチ”を変える社内DX化の推進で事務所の存在価値を最大化

伊藤 続いて中期経営計画に示されている社内DX化や体制整備についてお聞きします。社内DX化については具体的にどのような取組みを考えていますか。

栢森 社内DX化に向けたプロジェクトチームを立ち上げ、現在は11個のプロジェクトが進行しています。例えばワークフローの部分では、社内で行き交う文書のやりとりをすべてペーパーレスにしてデジタル化し、社内の問合せや様々な資料をBOT化するチャットボットの導入も進めています。そのほかフリーWi-Fi、物件進捗管理システム、ネットショップなどを導入するプロジェクトもありますが、それらがすべて具現化すると、事務所の外でも業務が行えるような環境になります。そうなると事務所の存在意義も必然的に変わってくるわけですが、個々の社員が事務所に集まる意味を考えながら情報交換することによって新しい視点や解決手段も生まれてくると考えています。最終的にはリアルな事務所を持つ価値の最大化が図れますから、社内DX化によって仕事のやり方だけでなく、会社そのもののカタチが変わると確信しています。

伊藤 社内DX化の中でも、チャットボットの導入は面白いですね。

栢森 当社のように全国展開していると、各支店営業所の担当者から本部宛てに様々な問合せが寄せられてきて、本部側はその対応に時間を割くことになります。その点、チャットボットに各種情報を関連付けて登録しておけば、例えば何々の製品の提案書がほしいといった場合もチャットボットで対応できるようになります。そうした取組みで事務所内の情報流通をDX化したり、事務所の外でも仕事ができるようになると、最終的には事務所はいらなくなるという考え方もできますが、そうではなくてむしろ情報交換や議論の場として事務所の存在価値を追求していこうというのが狙いにあります。

伊藤 今ある事務所の役割を発展させようというわけですね。

栢森 決算資料にも、DX化は作業を機械に置き換えるのではなく、仕事の流れそのものを変えることだと書いています。それに関連した取組みになりますが、将来あるべき事務所のカタチを探る目的で、本社ビル6階に実験的なフロアを作るリノベーションを目下進行中です。個々の社員の椅子や机を置かないカフェテラスのような空間になる予定ですが、何かを生み出す交流の場にするために、どの部署の社員でも隣り合って仕事ができる環境にしているところが今回のリノベーションの目玉になっています。

伊藤 そのほか社内改革としては、どのような取組みを考えていますか。

栢森 当社は創業50年になりますが、従来手をつけてこかなった在庫管理を変えていこうと思っています。例えば倉庫の作業は、必要なモノをピッキングして集荷場所に搬送し、届いたモノを確認して箱詰めしたのちにトラックに積み込むという工程になりますが、この流れのうち、入口部分のピッキング作業がロボット化されたのもここ数年の話です。それを実現させたのがネットショッピング大手のAmazonですが、実はAmazonの本質は物流改革にあります。Amazonは2015年から多額の資本を投じながら、物流の自動化に焦点をあてたロボットコンテストを行っていた経緯がありまして、そこからピッキング作業のロボット化が実現しました。そもそも大きさや重さが違うモノをピッキングし、空いた場所にモノを置き替える作業は、いくら在庫をコンピュータ管理していても結局は人の手が必要でした。それがピッキング作業のロボット化の実現によって、倉庫物流そのものを変えたわけです。

伊藤 御社でもそのような仕組みを導入されるのでしょうか。

栢森 さすがにAmazonほど先進的な仕組みを早急に入れるのは難しいですが、とりあえず在庫の確認の部分はすべて機械化したりして、それに近しいことをやっていこうとしています。また、支店や営業所に置いてある交換用の部品などの在庫についても見直しを図ろうと考えています。今は1日もあれば宅配業者が配送してくれる時代になっていますから、支店営業所に置く部品も昔に比べると相当減ってきています。そもそも修理などの作業は現場で行うので、わざわざ事務所を経由する必要はありませんし、事務所に在庫があるとその管理にも手間がかかります。

伊藤 この辺りは時代の変容に対応した取組みといったところでしょうか。

栢森 そうですね。お客様からの電話対応にしても、当社ではサポートセンターで一括対応していますし、今は営業所への電話よりも担当者の携帯電話に直接連絡がいくような時代です。そういう意味でも事務所のあり方を考え直す時期なのかなと考えています。

伊藤 最後に、御社のサステナビリティへの取組みについてお聞きします。御社は経営理念をもとにサステナビリティ基本方針を策定され、その基本方針のもとで5つのマテリアリティ(重要課題)を特定されています。そのうちの1つに「依存症への対応」を掲げられ、具体的な取組みとしてはスマホ用のギャンブル依存症チェックゲームをリリースされています。その意図についてお聞かせください。

栢森 当社のマテリアリティ「依存症への対応」はSDGsの17項目のうち「つくる責任、つかう責任」に位置付けられる取組みです。これまで業界で依存症対策を考えたときに様々な制約もあったと思いますが、当社としても依存症問題の解決に寄与する活動は企業命題です。当社で何ができるのかということで社内プロジェクトを立ち上げたところ、依存症について楽しく学びながら周知させていくにはゲームにしたらどうかという意見が出たので、昨年4月にリリースしました。おかげさまで各方面から高い評価をいただいておりますが、第2弾のリリースも今後予定していますので、期待していただけたらと思っています。

 

【対談インタビュー】ダイコク電機 栢森正勝氏(前編)

 

 

ダイコク電機株式会社 代表取締役社長
栢森雅勝(かやもり・まさかつ)

1966年生まれ、愛知県出身。東海大学大学院工学研究科卒。1987年ダイコク電機 監査役に就任以降、取締役、常務取締役、専務取締役を歴任。2005年代表取締役社長、2012年に代表取締役会長に就任したが、2023年4月に代表取締役社長に復帰した。

 

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