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【対談インタビュー】業界の情報分野のトップランナーが目指す次の一手 ダイコク電機 代表取締役社長 栢森雅勝氏(前編) 遊技通信2023年9月13日

遊技業界の情報サービス分野を牽引するダイコク電機。スマート遊技機の普及が好材料となって、2023年3月期決算、2024年3月期第1四半期決算ではいずれも増収増益となった。業界市場が縮小傾向にある中で、今後のホール経営をどう支援していくのか。同社の取組みと今後の展望について、ダイコク電機 代表取締役社長の栢森雅勝氏に聞いた(聞き手:遊技通信社 代表取締役 伊藤實啓、文中敬称略)。

主力の情報システム事業は「クラウド化」を推進
スマートパチスロ事業への参入は来年度中を目処に

伊藤 2024年3月期第1四半期決算は大幅な増収増益でした。その要因と今後についてお聞かせください。

栢森 スマート遊技機用のユニット「VEGASIA」の好調な販売状況に尽きると思います。それに合わせて情報公開端末「BiGMO PREMIUM」などその他の設備、またストック型ビジネスのMG(MIRAIGATE)サービスも好調ですが、今後については市場全体のスマート遊技機の進捗次第といったところです。今年7月末時点のスマート遊技機の設置比率はスマートパチスロが20.0%、スマートパチンコが2.8%となっておりまして、稼動推移をみるとスマスロは好調、スマパチはこれからといった状況ですが、設備関連の販売については、今後も好調さが持続されるものと見込んでいます。

伊藤 一時期は部材不足の問題がありました。半導体不足は状況改善されているのでしょうか。

栢森 まだ半導体不足は正常化はしておりませんが、市場購入などの取組みによってホール様の需要には応えられる状況になっています。他方で業界の市場動向をみると店舗数の減少が続いておりますが、そうした中でも大手企業はM&Aを積極的に進めています。当社の市場シェアは38.7%ですが、内訳は設置台数500台以上の大型店舗が占める割合が61%ですから、そうした観点からすると需要は継続していくと考えています。当社の中期経営計画の目標値についても、5月の2023年3月期決算時に上方修正しております。

伊藤 情報システム事業では、先駆的にAIやビッグデータの活用に取り組まれています。今後の展開についてお聞かせください。

栢森 中期経営計画では情報システム事業について、当社の製品サービスにAIやビッグデータといった最新技術を実装しながら、ホール様により活用いただけるサービス展開に向けて「クラウド化」の推進を掲げています。具体的には、Step1でホール様の1時間の作業を10分に短縮するといった「省力化」、Step2では多店舗展開時のマネージャー人材難に対応する「ノウハウの継承」。そしてStep3では、遊技機の選定や機種レイアウト、活用方法など、人間では不可能な精度での「予測」を実現するという流れをイメージしています。なお、当社のクラウド化を進めるにあたり、AWS(Amazonが提供しているクラウドコンピューティングサービスの総称)の運用サポートで知られるクラウド開発企業のグローバルワイズ社を昨年12月に子会社化しております。

伊藤 グローバルワイズ社のM&Aは、外部の有効な資源を獲得する方がスピードが速いという判断からでしょうか。

栢森 M&Aの目的はいくつかありますが、当社の製品サービスが新しい技術にすべて移行していく流れの中で、その方向性をさらに進化させるために、クラウド開発の技術者を確保しようというのが大きな狙いでした。実はクラウド関連の技術者はまだ国内にそれほどいません。外注でお願いしようにも技術者の数の少なさから発注費用が変動する可能性があるのに加え、そもそも仕事を受けてくれるのかという問題もあります。総じてこれから出始めの技術は、外注しても成果の保証が期待できないケースが多く、発注した規模や期間に応じた費用計算になるのでコストも高くなりがちです。これまでも当社では、社内教育の中で資格取得を推奨するなど技術者のレベルアップに取り組んできましたが、その部分をさらに推進するためにも積極的なM&Aで外部の技術者を確保して、クラウド開発力を強化しようという狙いもありました。子会社化したあともグローバルワイズ社には既存の仕事を継続してもらいながら、新規の仕事については当社向けに特化してもらう枠組みにしております。

伊藤 情報システム事業の今期の計画では、商圏分析サービス「Market-SIS」、チェーン店管理サービス「ClarisLink」、省力化ツール「らく替オプション」の3つの経営支援サービスの強化を挙げられています。進捗はいかがでしょうか。

栢森 いずれも順調に推移しています。これまでもそうでしたが、当社では製品発表して受注開始すると数字が上がってくるので手前味噌にはなりますが、当社の営業力はそれなりに強いと感じています。導入いただいたあともサービスの質や内容といった商品力がなければ維持できませんが、そうした部分についてもカバーできる社内体制があります。その一例として、当社の製品サービスを解約される際に必ず解約理由をヒアリングしていますが、その多くは閉店・廃業によるものが多く、製品サービスの質や内容を理由にした解約はほとんどありません。日頃からホール様の声を製品サービスの改善につなげる取組みを継続していることもあって、今期の計画に掲げた3つの経営支援サービスの強化についても着実に進んでいます。

 

AMS統括部を新設して組織再編し、パチスロ事業に再チャレンジ

伊藤 御社の中期経営計画では新たな取組みとして、スマートパチスロ事業への早期参入をはじめとしたパチスロ事業の再編もひとつの柱に挙げられています。

栢森 これまで当社の事業は、情報システム事業と制御システム事業を二本柱にしておりましたが、そのうち制御システム事業はパチンコ向け基板製造や部品などのビジネス規模が縮小していて、特に遊技機用ユニットについてはリユース化が進んでいます。事業の存続に影響するほど環境が変化していますから、これまでの制御システム事業部と生産統括部を一本化してAMS(アミューズメント&サプライ)総括部を新設し、新たな事業として再度パチスロの開発・製造にチャレンジすることにしました。この組織再編に加えて、当社の子会社にはパチスロメーカーのDAXELとソフト開発会社のアロフトがありますが、今年の4月にソフト受託会社のライリィを孫会社化しております。パチスロ事業には生産・供給も重要になりますから、新設したAMS統括部はそのための部署になります。

伊藤 スマートパチスロの機種投入はいつ頃を予定されていますか。

栢森 今のところ2024年度中にリリースする予定で進めています。目下開発中ですが、販売ルートやマーケティングといった部分はまだこれからといった状況です。ちなみに2024年度中を目処にしているのは、単純に開発や申請、製造にかかる期間から算出したものになっています。

 

ダイコク電機株式会社 代表取締役社長
栢森雅勝(かやもり・まさかつ)

1966年生まれ、愛知県出身。東海大学大学院工学研究科卒。1987年ダイコク電機 監査役に就任以降、取締役、常務取締役、専務取締役を歴任。2005年代表取締役社長、2012年に代表取締役会長に就任したが、2023年4月に代表取締役社長に復帰した。

 

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