【寄稿】役モノ機不遇(WEB版)/大﨑一万発
遊技日本2021年2月19日
パチンコ共和国の住人より③
役モノ系機種の新台リリースが相次いでいます。パチンコの原点ともいえるゲーム性を今に伝える役モノ機は、羽根モノや一発台で育った僕らアラフィフ世代にとって大いに打ち気をそそられるカテゴリ。設置を見つける度に勝ち負け度外視で挑戦してみます。
が、予期していることとは言え、ロマンや郷愁を感じる暇もないド酷い運用状況に、悲しいを通り越して呆然とする場合がほとんどです。いわゆるボーダーラインの半分程度しかない入賞率など当たり前で、玉の動きを楽しむ以前の問題と言いますか、ゲームのスタート地点にも立てないまま、ああこの店もそうかと絶望して韋駄天のシマに向かう……。僕はホール性善説を未だ信じている打ち手ではありますが、今どき役モノ機を導入してくれる「心あるホール」にして、この厳しい現実。マグレ当たりを狙うだけのギャンブルとして遊ぶのであれば、店側の悪意が介在できない高連チャン機を選びたくなるのは当たり前の話です。
アナログな役モノ機には、運用の厳しさをごまかしてくれる液晶モニタのサポートがありません。一定の入賞率を下回ってしまうと、娯楽を供する遊技機として成立しなくなってしまう。また、偶然よりも必然が支配する(スペックが多い)ゲーム性ゆえ、シメすぎは客を殺し、アケすぎてはプロの餌食にもなる。生かさず殺さず客の顔を見つつ、個体差や営業形態も加味した「面白い!」に仕上げていく繊細なメンテナンス手腕が問われるカテゴリなのですが、何なんでしょう、心意気も機微も感じられないこの雑な扱いは。原点回帰だの遊べるパチンコを目指そうだの、口だけ立派なホール関係者は少なくないですが、言行不一致にも程がある。繰り返しますが、心ある(と僕は信じる)ホールにしてこうなのです。いや逆に、うるさいマニアなど不要、扱いの難しい役モノ機は入れないとハッキリ方針が見えるホールの方がよほど良心的に思える。客には店を選ぶ自由があるわけで、感性が合わないなら行かなければいいだけですからね。
その昔、役モノ機が主役だった時代は、40玉(以下)交換の打ち止め制営業がほとんどでした。だから時に思い切ったサービスも可能だったし、通常営業でもゲーム性崩壊レベルで入賞しないなんて事態は起こり得なかった。しかし高交換率・無制限営業が主流となった今のホール環境においては、一発台タイプだけでなく羽根モノも、ゲーム性を活かしつつエンタメ性と商売を両立させる運用は至難に思います。まあ交換率は致し方ないにしても、なぜ打ち止め制や回数交代制にして使わないのか、あるホール管理者様に訊ねたことがありますが、端的にコスパの問題。そんな手間をかけられない、人員が回らないとご時世を反映したシビアな答えを頂戴しました。ならなぜ入れる?って、シメっ放しでもマニアは打つ、未練打ち機として期待せずに打つ人がいる。そして入替せずに長期置いておける。すなわち、ホールの貯金箱として底堅く貢献してくれるからだと。いや、わかるんですけど、それって客の食いつぶし、パチンコが栄華を誇った時代の、焼き畑農業的思考以外の何物でもない。今は客を増やさなきゃいけない、育てていく必要性が問われているフェーズではなかったんでしたっけ?
玉の動き云々は、パチンコ以外の娯楽には提供し得ないエンタメ性です。萌えやらギャンブル性やら以上に大事にすべきオンリーワンのセールスポイントです。そこを大事にしなきゃ、パチンコである必要性はなくなってしまうんじゃないかと危惧してるんです。バラに1台だから雑でいい、ではなく、だからこそいろんなチャレンジ、試行錯誤ができるんじゃないでしょうか(また、そこがメンテナンス業務の「面白さ」でもあるはずと呑気なことも考えます)。
アナクロなゲーム性を新台として形にしてくれるメーカー様、導入してくれるホール様には頭が下がりますが、もう一歩がんばって「使いこなす」まで含めて提示してもらわないと共和国民の心は離れるばかりです。『ワイルドロデオ』も『スーパーコンビ』もメッチャ面白いんですけどねぇ。普通の釘ならば。