統合型リゾート(IR)フォーラム 東京で開催
アミューズメントジャパン2019年7月10日
マカオ特別行政区の公立マカオ大学は7月6日、都内のホテルメトロポリタン池袋で、「日本における健全な統合型リゾート(IR)」をテーマにしたオープンフォーラムを開催。IRがもたらす可能性のある社会的な「負の面」の極小化に、いかに取り組んでいるかを、学術界の研究、政府の政策、IR産業の取り組みなどマカオの事例を様々な角度から紹介した。
マカオ大学アジア太平洋経済経営研究所所長のジャッキー・ソウ教授(工商管理学院の前学院長)の挨拶に続き、国土交通省観光庁の秡川(はらいかわ)直也審議官が基調講演を行い、カジノを含むIR導入議論の経緯、IRの定義、日本独自の機能、IRの中にカジノが必要な理由、安全性を管理する仕組みなどを説明した。
秡川審議官は、IR整備法が定義している日本のIR(正確には特定複合観光施設)を、カジノ施設のほかに、
①国際会議場施設
②国際展示・見本市施設
③日本の観光の魅力を増進する施設
④観光情報の提供や国内観光旅行の手配施設(送客機能)
⑤宿泊施設
の5機能を備え、これらを一体として運営される施設と説明。この中で、他国のIRと比較して日本に独特なのが、魅力増進機能(3号)、送客機能(4号)。
秡川審議官は、3号を「日本の魅力を知ってもらう、本物の日本に出会える施設」と表現。4号は、外国からのゲストをIRに誘致するだけでなく、日本全体の観光振興のためにIRを起点に日本中に旅行に出かけてもらうために設ける、日本IRに独自なものだと説明した。
続く講演ではマカオでIRを運営するメルコリゾーツ&エンターテインメントのエグゼクティブ・バイスプレジデントのケリー・アキコ・タカハシ氏、ギャラクシー・エンタテインメント・グループの日本地区最高執行責任者のテッド・チャン氏がそれぞれ、雇用創出への寄与、地域社会の中小零細企業の事業発展への寄与、レスポンシブルゲーミング(RG)推進の取り組みなどを説明した。
マカオではカジノライセンスの開放後、新たなカジノ施設が次々に開業し、市民のギャンブリング障害の増加が大きな社会問題と認識された。しかし、マカオ大学が続けてきた調査研究に基づき、産官学の連携によるRG政策が2009年から実施されると、徐々に効果が表れた。2013年に行われた調査では、マカオ市民のギャンブリング障害有病者率は、前回調査(2010年)より1・9ポイント低下し0.9%だった。これはシンガポール、香港とほぼ同じ水準。また、2012年から各カジノ施設に、カジノ客が包括的にRG情報にアクセスし、ゲーミングの正しい知識などを得られるインタラクティブ端末「RGキオスク」が設置された。これはマカオが産官学の協働によって独自に開発したもの。
講演に続くパネルディスカッションには、マカオ大学からグレン・マッカ―トニー教授(国際IR経営管理学、ノンゲーミングIR管理学を担当)、リカルド・シウ教授(レジャー産業応用経済学を担当)、ロビン・チャーク教授(カジノ心理学、レスポンシブルギャンブリングを担当)の3人、キャピタル&イノベーションの小池隆由代表(情報メディア「カジノIRジャパン」を運営)、タイガーリゾートレジャー&エンターテインメントの大屋高志取締役社長(フィリピンでIR「オカダ・マニラ」を運営)が、それぞれの知見をシンポジウム参加者と共有した。
会場にはメディアをはじめ、日本IRに関心を寄せる様々な企業、地方自治体外郭団体など約150人が詰めかけた。