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IR(統合型リゾート)を用いた埋立地における新規都市開発と観光政策に関する研究 グリーンべると2024年4月25日

NRC一級建築士事務所代表 鶴田一氏が
IR(統合型リゾート)研究において博士号取得

【研究概要】
本研究は現在我が国で継続的に行われているIR関連の議論、政策検討の変遷が都市開発、観光政策にどのような影響を及ぼしているかを明らかにし、同時に大阪市の埋立地における新規都市開発の空間的活用手法とそれに伴う観光政策について、行政資料及びインタビューを基に分析している。そして、IR先進国であるシンガポールでの合法化検討過程並びに都市開発及び観光政策との連動を明らかにし、それらを我が国の政策及び整備状況と対比させることで日本IRの特徴を浮き彫りにしている。

研究を始めたきっかけ

IRは雇用拡大や経済波及効果等の経済的メリットと依存症や治安悪化等の社会的デメリットの二極のみで議論されることが多いのですが、IR先進国であるシンガポールではリー・シェンロン首相が2005年のIR合法化時に観光産業、都市開発における社会的メリットについても声明しています。要するに同国はIR合法化検討過程において多面的に議論されており、それがマリーナ・ベイ・サンズに見られるように世界から注目される観光ディスティネーションとして不動の地位を確立し、観光立国として大きな経済発展を遂げる要因となっています。そこで自分の専門分野でもある都市開発や観光政策の観点から、日本にとって未来産業と成り得るIRについて探求してみたいと思ったのがきっかけでした。

研究を通したIRに対する新たな気付き

2016年に研究を始めた頃、まず日本ではいつから合法化における議論がされているかを調査しました。多くの国民は与党が十分な議論を尽くさず強行突破で法案を通したという心象があるかと思います。しかし、国会で最初にカジノやIR(当時はIRという言葉はなかった)について議論されたのは戦後間もない昭和24年(1949)でした。国観法「別府国際観光温泉文化都市建設法案」(交布日:昭和25年(1950年)7月18日)に付随して、国際観光を基点とした都市開発やその他複合的なレクリエーション施設や飛行場施設等のインフラ整備に伴ってカジノ施設についても議論されています。以降2000年初頭よりリゾート法によって開発された地方のレクリエーション施設がバブル崩壊により財政を圧迫するようになり、それらの施設を経済特別区としてIRを誘致するという動きが活発化しました。このように日本ではカジノ合法化について古くから議論されており、その論調は時代背景と共に変遷していることが分かりました。この気付きは本研究を深く掘り下げていく起点にもなりました。

日本における今後のIR関連事項へ対する示唆

近年主要なアジア諸国では経済発展のために共通した手法を用いています。それは、大型都市開発に起因する社会的摩擦を回避するために埋立地を利用し、そしてIRを起点として都市開発を行っている点です。シンガポールを例に挙げると、その開発順序はブランディングをしっかりと構築した上で同埋立エリアに連続性を持って住居系用途へ移行出来るよう綿密に計画されています。また都市開発と観光政策を国家施策として連動させて国際観光振興を活発化させていく手法は、今後人口減少による社会福祉費増大に伴う財源不足が予想される日本にとって示唆と成り得ます。現時点での日本における万博、IRはブランディングが確立されているとは言い難く、早急に世論をしっかりと把握した、地に足のついた施策を打ち出していく必要があります。世論が求めているのは一時的で祭り事のような施策ではなく、連続性や一体性のある次世代へ繋がるような施策ではないかと想像出来ます。

シンガポールの風景鶴田 一 HAJIME TSURUTA株式会社NRC一級建築士事務所代表取締役博士(工学)、一級建築士オレゴン大学建築学部卒業後、2008年にNRC一級建築士事務所開設。2021年シンガポール都市再開発局主催アカデミー修了。2024年国立東京工業大学博士後期課程卒業後、都市開発及び観光政策分野にて講義を行う。国内外建築賞、芸術賞多数受賞。執筆書◎シンガポールにおけるカジノ合法化検討過程に関する研究』(公益社団法人日本都市計画学会)2017年10月、『わが国におけるカジノ及びIRをめぐる言説・事象の変遷』(一般社団法人日本観光研究学会)2021年12月、『IR整備をめぐる候補自治体における議論に関する研究』(一般社団法人日本観光研究学会)2022年12月、『IR(統合型リゾート)を用いた埋立地における新規都市開発と観光政策に関する研究』(国立東京工業大学博士論文)2024年3月

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