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【調査報道】高射幸性回胴式遊技機、自主規制の行方/中台正明 遊技日本2019年10月4日

●中台レポート③
保通協の型式試験のパチスロ適合率は低迷が続き、9月は再び20%割れ(19.4%)。6号機の先行きに不安を抱くホールは依然多いことだろう。そうしたなか、全日遊連(阿部恭久理事長)がパチスロをめぐり、難しいかじ取りを迫られている。

全日遊連ではパチスロにおける高射幸性旧基準機の設置比率を①2019年1月末までに15%以下、②2020年1月末までに5%以下、③2021年1月末までに0%とする自主規制を昨年4月24日に決議していたが、その後、①は6号機の供給不足を理由に延期を決定。現在に至っている。この自主規制の取扱いについて、②の期限が近づいたため、再び決断を求められることになったのだ。

9月20日の全国理事会で阿部理事長は新たな期日を検討する状況にはないとしたが、異論も出て、活発な議論が展開されたという。そこで同自主規制問題の争点を整理する。

●「5%以下とする設置期限の見直しやむなし」の論拠
全日遊連の9月20日の全国理事会では、阿部理事長が冒頭挨拶で、各ホールの当該機種の設置比率目標値を15%以下とする期日を昨年11月14日の理事会で延期したことに言及。新たな期日は6号機の供給状況などを見ながら再検討するとしていたが、状況は依然として極めて厳しく、中古機として出回る6号機も品薄状態にあると説明した。

したがって、当面、自主規制の新たな期日を検討する状況にはないと考えていると明かした。ただ、高射幸性旧基準機を一貫して減らしていく方針に変わりはないとして、協力を求めたという。

すると、「議題にはなっていなかったのだが、理事会中、設置比率問題を取り上げる理事がいて、それを契機に5%以下とする期限をどうするかという議論になっていった」と某出席者は振り返る。

複数の出席者によると、支配的だったのは5%以下とする期限も先送りせざるをえないとする意見。某県遊協の理事長は「15%以下とする期限は先送りにしたままで、そう判断した状況が変わらないのだから、5%以下とする期限も当然延期すべきだと考えていた」と話す。

●見直し反対派は「正直者が馬鹿を見てはならない」
一方、見直し反対派が訴えたのは「当県の組合員は約束を守るべく、粛々と努力してきた。正直者が馬鹿を見る選択をすべきではない」という意見。15%以下とする期限の延期を議論した際にも唱えられた主張だ。

また、2018年2月1日以降に検定・認定が切れる旧規則機は有効期間満了日をもって撤去しなければならない。この“自然減”でも、高射幸性旧基準機は来年1月末で約6.8%になると試算されている。そのため、実際に自主規制で外さなければいけない台はパチスロ全体の約2%に過ぎないとして、見直しに反対する理事もいた模様だ。

こうした議論に対して、阿部理事長は型式試験の適合率が低いだけでなく、適合機種のすべてが販売されるわけではないことなども説明。警察庁とやりとりした上で、執行部の方向性を示すとし、場合によっては臨時理事会を開く旨も伝えて、その場をおさめたという。

●警察庁の意向もあって決めた自主規制
そもそも、高射幸性パチスロ機の設置比率に関する自主規制は、全日遊連、日遊協、日工組、日電協、全商協、回胴遊商の6団体合意に基づき、すでに高射幸性旧基準機の優先撤去に努めてきた業界側に対し、具体的な削減目標設定を求める警察庁の意向を受けたものだった。

そこで流れを整理すると、今回の問題のスタートは2015年6月24日に全日遊連が決議した新基準に該当しない遊技機の自主規制策にさかのぼる。

新基準に該当しない遊技機の自主規制とは、メーカー団体の自主規制により、パチンコが同年11月から大当たり確率の下限が320分の1以下の遊技機のみ、パチスロは同年12月から主基板制御で、かつペナルティー機能非搭載の遊技機しか市場導入できなくなることに伴うもの。過度なのめり込み防止の観点から、これら新基準機への円滑な移行にホールも協力すべきとの判断だった。

具体的には、新基準に該当しない遊技機の設置比率を、パチンコは2016年12月1日までにパチンコ設置台数の30%以下、17年12月1日までに20%以下にし、パチスロは16年12月までにパチスロ設置台数の50%以下、17年12月までに30%以下にすることを決議。

さらに、射幸性抑制は業界全体で推進すべきだとする警察庁の意向もあって、2015年9月30日に主要6団体が締結したのが「高射幸性遊技機の取扱いに関する合意書」と「高射幸性遊技機に関する申合せ」で、新基準に該当しない遊技機のなかでも特に射幸性が高いとされる遊技機について、ホールは優先して撤去に努めることなどを申し合わせた。

だが、パチンコはその後、「検定機と性能が異なる可能性のあるぱちんこ遊技機」問題により当該遊技機すべてが撤去され、高射幸性機の優先撤去はパチスロだけの問題となる。

その現状について、警察庁保安課の担当課長が講話で、必ずしも6団体合意のとおりになっていないと指摘したのが昨年1月19日の全日遊連理事会。新たな業界の自主的な取り組みを早期に決定するよう促したため、設置比率の自主規制決議に至ったわけである。

●5%以下とする設置期限を見直した場合の影響
今年8月末現在、高射幸性旧基準機の設置比率は16.35%(日電協調べ)。この比率を来年1月末までに5%以下とする期日目標を15%以下のときに続いて先延ばしした場合、どんな展開が予想されるのか?

店舗間格差が広がる可能性があると読むのは老舗ホールの営業責任者。「倉庫にある認定期間中の高射幸性旧基準機の再設置や同一県内の系列店間移動で、1台でも多く設置しようとするホールが現れる。その数%の差が営業的には小さくない」と言う。

逆に、助かる中小ホールは多いはずとの見方もある。中堅ホールの経営者は「この夏頃から廃業店舗が増えているが、15%以下とする期日を先延ばししていなければ、撤退はもっと加速していた。5%以下とする期日先延ばしも決して中小の逆風にならない」と強調する。

では、業界全体への影響はというと、「世間から約束を守らない業界だとみられかねない」と某ホール団体の役員。実際、すでにインターネットには業界の良識が問われているなどの記事が出ている。

しかし、「守れるものなら、守りたい。だが、全日遊連は全国のホールを束ねる組織なので、最大公約数を選択せざるを得ない。6号機の供給面というホール以外の問題で、大方のホールが足並みを揃えて守れる環境にないならば、見直すのが組合のかじ取り」と某県遊協の理事長は理解を求める。

「当初から予想できた展開で、実現困難な約束をしたのがそもそもの間違い」(某ホール団体役員)との意見もあるが、それは今、口にしてもせんないこと。「自主規制は、目安として一定の意味はあった」(地方のホール関係者)との声もある。どのような方向に進むにせよ、業界外からの問いかけには一枚岩で答えられるよう、全日遊連の執行部は組合内のコンセンサスをまとめてほしいと思う。

■プロフィール 中台正明 1959年、茨城県生まれ。フリーライター。大学卒業後、PR誌制作の編集プロダクションなどを経て、1996年3月、某パチンコ業界誌制作会社に入社。2019年2月に退職し、フリーとなる。趣味は将棋。  

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